2020年、日本発の新たなスポーツ観戦スタイルが世界を驚かせるかもしれない。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は「史上最もイノベーティブな大会」を目標に掲げ、ICT(情報通信技術)を駆使した「スポーツプレゼンテーション」の強化を打ち出している。

 スポーツプレゼンテーションとは、映像や音声、照明、進行などを含め、スポーツイベントの魅力を高めるための企画や演出のこと。オリンピック・パラリンピックは2000年開催のシドニー大会から取り入れ、スポーツの新たな魅力を伝えたり会場の臨場感を高めたりする工夫を重ねてきた。2016年開催のリオデジャネイロ大会では360度映像の配信が大きな話題となった。

 2020年開催の東京大会が最終的にどのような企画や演出となるかは決まっていないが、その萌芽も見え始めた。なかでも意欲的な取り組みを進めるのは、2020年に5G(第5世代移動通信システム)の導入を控える携帯電話大手。5Gで4K(3840×2160画素)や8K(7680×4320画素)の大容量・高精細映像を配信できるだけでなく、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などを組み合わせて臨場感を高められる。5Gをアピールする絶好の機会というわけだ。

フェンシング:素人には追えない剣先をAIで可視化

 「速すぎて全く分からない」。思わず来場者が声を上げる。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が2017年11月29日に主催した「東京2020パラリンピック」の1000日前イベント。リオ2016パラリンピックで女子車いすフェンシングの金メダリストであるベアトリーチェ・マリア・ヴィオ選手と、日本フェンシング協会の太田雄貴会長(オリンピックの北京大会とロンドン大会の銀メダリスト)によるエキシビジョンマッチが、東京スカイツリーにあるNTTドコモのイベントブースに中継された。

 多くの来場者が驚いたのは、両選手の剣の動きの速さ。素人目にはどこに突きが入ってポイントを挙げたかが分からないのだ。

 それもそのはず。太田会長の解説によると、エキシビジョンマッチで披露したフルーレという種目では1秒間に何度も攻撃権が入れ替わるという。瞬時の技と攻防の応酬が醍醐味なわけだが、経験者やファンでなければ分からない。ただ、同イベントでは一般の来場者も十分に楽しめる仕掛けを用意した。

 その一つが、剣先の動きと剣が当たった瞬間を可視化する仕組みだ。選手の剣が画面上で光って表示されるため、動きが鮮明に分かる。突きが決まると、その周辺を円で囲って強調表示する。説明員によれば、剣先にセンサーを取り付け、AI(人工知能)による画像認識で剣の軌跡を描いているという。

剣の動きが光って表示される
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突きが決まった場合は強調表示される
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 さらに試合の様子を複数台のカメラで撮影し、イベントブースで来場者が9つの視点から観戦できるようにした。例えば、太田会長の目線や背後、両選手の頭上などに自由に切り替えられる。試合の流れを把握するには正面の映像が最も優れる印象だが、複数の視点を組み合わせることで臨場感が高まる。単純に観戦を楽しめるだけでなく、選手の凄さが際立って伝わるため、スポーツプレゼンテーションの見本と言えるようなイベントだった。

頭上から見た様子
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 太田会長によると、「多視点カメラ(の採用)はフェンシングで初めての試み」。今回の成功を受け、「スポーツ×テクノロジーにはまだまだ未来がある」と期待を寄せた。

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