美しい光沢や金属のような質感を追加の加工や塗装なしで実現する。こんな魔法のような樹脂素材、塗装レス樹脂が続々と登場している。塗装レス樹脂の部品は射出成形だけで造れるため製造コストを大幅に削減できる。加工の作業負担や塗装工程に不可避な揮発性有機化合物(VOC)とも無縁だ。塗装がないため、シボ(表面に設ける細かな凹凸のデザイン)のようなこれまで難しかった表面処理も可能になる。高い意匠性と外観品質を武器に、塗装レス樹脂を使った製品の提案が相次いでいる。

Al合金製に見える樹脂製部品

 図1は、スマートフォンの筐体と歯車部品のサンプルだ。一見するとアルミニウム(Al)合金のような、それも高級な着色陽極酸化処理を施したものを思わせる外観品質だが、樹脂製だ。しかも塗料も顔料も使っておらず、表面処理も行っていない塗装レス品である。ユニチカの金属調の着色樹脂(以下、金属調樹脂)「NANOCONメタリック」を使っている。

図1 金属調樹脂で成形したスマートフォンの筐体(左)と歯車(右)のサンプル
塗装レスでありながら、着色した陽極酸化処理を施したAl合金で造ったような外観に見える。
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 この新しい金属調樹脂は、5質量%未満とごく少量のケイ酸塩を強化材としてポリアミド(PA)6に加えた上で、金属調(メタリック)顔料を混ぜて着色した。ケイ酸塩の添加により強度と耐熱性を高めた。メタリック顔料はAl合金粉末に顔料を混ぜている。塗装レスで金属調の外観品質を実現する理由は2つある。

 まず、強化材であるケイ酸塩が十分に小さい。ケイ酸塩の長さは約30nmと、ベース樹脂であるPA6の分子鎖の長さとほぼ同じオーダー。そのため、樹脂への入射光やメタリック顔料からの反射光を遮る確率が小さい。つまりその分、メタリック顔料からの反射光の光量が多くなるため、外観品質が金属に近づく(図2)。

 従来の金属調樹脂は、強化材に繊維が長いガラス繊維を使っていたため、樹脂への入射光やメタリック顔料からの反射光を遮りやすく、その結果、メタリック顔料からの反射光の光量が少なくてくすんだ感じに見えてしまう。例えば、銀色ではなくねずみ色になるといったイメージだ。

図2 金属に近い外観品質を得られる仕組み
左の新しい金属調樹脂は強化材が小さいため、外光の入射光と反射光を遮りにくい。その分、メタリック顔料からの反射光の光量が増えてより金属に近い光沢に見える。これに対し、右の従来の金属調樹脂(ガラス繊維強化樹脂)は、強化材が大きいため、遮る入射光も反射光も増える。そのため、くすんだ色に見えてしまう。
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 金属調の外観品質をもたらすもう1つの理由は、ケイ酸塩の白色度が高いこと。樹脂に他の色が着いてないため、メタリック顔料の発色が良くなる。

 金属部品を代替すれば軽量化できる他、形状の自由度も高いのが樹脂の魅力だ(図3)。鏡面加工やさまざまなシボ加工も簡単にできる(図4)。だが、最大の魅力はコスト削減だろう。塗装を施した金属製部品を塗装レス樹脂製部品で置き換えた場合で試算すると、なんと3~7割のコスト削減が見込める。

図3 塗装レスの樹脂製自動車部品
射出成形で加工するため、複雑な形状でも成形できる。
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 塗装工程は、製造業の場合、除電・除塵工程、下塗り工程、乾燥工程、中塗り工程、乾燥工程、上塗り工程、乾燥工程、検査といった工程を要する。建築・土木業の場合は、さらに足場の設置や養生、解体などの付帯的な工程が加わる。工程が多い分、塗装をすると部品の加工コストは跳ね上がる。金属調樹脂ではこれらの工程を全て省ける上に、加工工程自体にも低コストな射出成形を使える。これらが積み重なりコストを大幅に抑えられるわけだ。

図4 表面にシボを設けた樹脂製板のサンプル
金属調樹脂を射出成形して造った。もちろん、塗装は施していない。
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