「日本は糸(炭素繊維)は強いが、量産性に優れる炭素繊維強化樹脂(CFRP)の成形技術、特に大物部品の成形技術で欧州の後塵を拝している」(名古屋大学ナショナルコンポジットセンター特任准教授の日下髙至氏)。こうした課題から誕生したのが、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)を使った自動車用シャシーである(図1、2)。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と新構造材料技術研究組合(ISMA)の組合員である名古屋大学ナショナルコンポジットセンター(NCC、以下NCC)が開発した。

図1 「オールCFRTP」で出来たクルマのシャシー
前方から見た。車体中央の黒色の部分がCFRTP製シャシー。ロータス社のスポーツカーのAl合金製シャシーをCFRTPに置き換えて造った。質量は5kg軽い40kg。
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図2 オールCFRTP製シャシー
左後方から見た。大物CFRTP製部品を組み合わせて造っている。
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 炭素繊維、つまり糸の世界シェアは、日本が圧倒的である。東レと帝人グループの東邦テナックス(本社東京)、三菱ケミカルホールディングスグループの三菱ケミカル(本社東京)の3社だけで世界シェアの7割を占める。部品や材料、成形メーカーを中心に小物部品のCFRTPの成形技術の開発は活発だ。だが、自動車の構造部材に使えるほどの大物部品になると、開発実績そのものが一部のメーカーに限られている実態がある。そこで、NCCに先の炭素繊維メーカー3社に加えて、トヨタ自動車やホンダ、スズキ、小松製作所、アイシン精機など8社の計11社が参画し、「オールジャパン」の体制で開発を進めた。

 開発の狙いは、アルミニウム(Al)合金製シャシーの置き換えによる軽量化効果の検証と、量産に向けた課題の洗い出しだ。今回は、英ロータス(Lotus)社のスポーツカー「Lotus Elise 111S」のAl合金製シャシーを基にCFRTP化にトライした。CFRTP製の試作シャシーの質量は40kgと、45kgの元のAl合金製シャシーよりも5kg軽くしている。

 新しいシャシーの構造は、中央にフロアパネルがあり、同パネルをセンターメンバーが横切る。フロアパネルの左右両端には、それぞれ内側にサイドシルインナーが、外側にサイドシルアウターが付く。加えて、フロアパネルの前端にはフロントパネルアッパーとフロントパネルロアを、後端にはリアパネルロアとリアパネルアッパーを設けた(図3)。これらの大物シャシー部品の接合にはボルトやナットなどの締結部品や接着剤を使わず、超音波融着法を採用した。すなわち、熱可塑性樹脂部分を超音波振動と加圧力で溶融した後、冷やして硬化させて部品同士を強固にくっつけている。

図3 新しいシャシーの構造
中央のフロアパネルの四方をフレーム材で囲んだ構造となっている。大物CFRTP製部品を10点組み合わせることで出来ている。接合には超音波融着法を使った。
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