日経ホームビルダー2019年9月号の特集「手すり壁の防水 『常識』大検証」は、7月号の「夏型結露」に続いて、またまた本誌独自の実験企画です。題材として注目したのは、木造戸建て住宅に設けるバルコニーの手すり壁。雨仕舞いや防水の弱点が生じやすい典型的な部位であることは、読者の皆さんもご承知かと思います。今回、特にスポットを当てたのは、手すり壁の天端部分。納まりの異なる複数の試験体を作成し、一定の条件で防水性能を比べてみました。担当記者が研究者や専門家とタッグを組んで、約3カ月をかけてまとめ上げた渾身(こんしん)の記事です。

 従来の「常識」を再検証した実験の結果は…。詳しくは記事をご覧いただくとして、私が改めて「侮れないな」と感じたのは、家づくりという技術・技能の奥深さでした。

[画像のクリックで拡大表示]

 住宅建築で施工や現場管理、工事監理業務を手掛けている読者はよくご存じですが、雨仕舞いや防水に関わる部位・部材の施工過程で、最も用心が必要なのは工程や工種が切り替わるタイミングです。建て方を終えて防水紙を貼り、胴縁を打って外壁を施工し(乾式外壁や、通気層付きの湿式外壁の場合)、その間に要所要所で防水処理を施して…。

 しかし、物事はそう簡単ではありません。例えば防水紙の施工にしても、大工職が建て方から続いて手掛けるパターンがあれば、外壁の専門工事会社が実施するパターンもあります。バルコニーの手すり壁のように、建物の部位によっては外壁施工の後に板金工事が加わる場合もあります(先行の外壁水切り板金などは別として)。板金工事は通常、板金の専門工事会社が手掛けます。

 ごく大雑把に言えば、雨仕舞いは降雨が屋外に流れ落ちる“道”を設け、防水は雨水の浸入を防ぐという点に、それぞれの役割があります。互いに補完し合う役割ですが、これらは、家づくりに関わる施工者1人ひとりが「誰が何を手掛けるか」を明確に認識していてこそ、全体として実現できるもの。しかし一般にこれらの仕様は設計図書に記されず、現場任せになっているケースが珍しくありません。

 特集の実験結果で私が強く再認識したのは、試験体それぞれの成績もさることながら、工事全体を通した管理・監理の精密さが住宅性能をかくも左右する、という点でした。家づくりのプロセスを「心・技・体」に例えて分類するなら、「心」に当たる部分とでも言うべきでしょうか。古くて新しい課題、そして実務上は決して容易でない課題――。これらに挑むことは、モノづくりの奥深さに触れることでもあると思うのです。