重大なリスクほど見えないところに隠れている──。ものづくり全般に通じるこの箴言(しんげん)は、家づくりにも当てはまります。木造住宅の壁内結露もそうした例の1つ。壁などの内側で生じる結露がカビの発生や木材の腐朽を招くことで、住まい手が気付かないうちに建物の深刻な劣化が進むケースは珍しくありません。

 壁内結露で近年、注目を集めているのが「夏型結露」(逆転結露)です。夏型結露は、「外壁が日射で暖められて、壁体を構成する木材が蓄えていた水分を放出。室内側の温度で冷やされて防湿層で結露」というメカニズムで生じます。室内冷房を使う時間が長い時期に生じやすいことが、「夏型」という名称の由来。夏型結露に起因するトラブルが目立ってきた背景として、木造住宅の断熱・気密性能が飛躍的に向上してきたことも無関係ではないでしょう。

 日経ホームビルダー7月号の特集「顕在化する夏型結露トラブル」は、この現象に注目しました。トラブル例や住宅会社が実践する対策の他、担当記者が自ら、外部の専門家の協力を得て取り組んだ実大試験体による独自実験を紹介しています。

[画像のクリックで拡大表示]

 「冬型結露」は室内の空気中に含まれる水蒸気が断熱層の屋外側で結露する現象であるのに対して、夏型結露は、断熱層の屋内側となる防湿層裏面(防湿シートなどの壁内側)で生じる点が特徴です。メカニズム自体は既に解明されていますが、実際に目で見る機会はまずありません。実験の狙いはまさにそこ。現象の「見える化」です。夏型結露が生じる主な原因は、施工中の雨掛かりや完成後の雨水浸入などで壁体の木材(合板など)の含水率が上がってしまっていることにあります。その状態を試験体で再現するために味わった苦労など、記者と専門家の協働による労作をぜひご一読ください。また、この特集の実験編をベースに日経 xTECHで先行公開した記事「危ない夏型結露、実大実験で検証」には、一部に動画も盛り込んでいます。

 「見えないところにリスクあり」という言葉を別の意味で戒めとして考えさせられたのは、7月号の「使えるニュース」で紹介したレオパレス21の施工不備を巡る問題です。外部調査委員会の最終報告を踏まえたこの記事を読むと、「設計担当者は確認申請で建築主事の理解を得られないと認識したうえで、実態と異なる図面を示していた」「工事監理者は、監理者としての活動を何も行っていなかったことを自認している」など、プロ意識の有無以前に、前提であるべき倫理観の欠如ぶりに戦慄すら覚えます。

 住宅建設に限らず、ものづくりで真の技術力とは本来、必ずつくり手の“心”や“魂”に裏打ちされているものと信じます。日本のものづくり全般で技術力の低下を懸念する声がちらほらと聞こえてきますが、それが本当だとしたら、問題の根っこはレオパレス21の施工不備とそれほど遠くないところにあるのかもしれません。

 7月号では連載「事例で分かる雨漏り修理のツボ」、同じく「知らねば売れぬ木構造のイロハ」でも、木造住宅の設計・施工で見過ごしがちなリスクがテーマです。「雨漏り修理のツボ」は土台水切り板金の形状に、「木構造のイロハ」は耐力壁でありがちな設計上の盲点に、それぞれ焦点を当てました。技術力の差は見えないところや、目立たないところにこそ現れる――。そうした視点でこれらもお読みいただければ幸いです。

出典:日経ホームビルダー、2019年7月号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。