日経ホームビルダー2019年3月号では、屋根材の耐久性や寿命などに焦点を当てた「短命屋根材の責任」を特集に据えました。国が長期優良住宅という概念を打ち出し、耐久性などに優れた高品質の住宅の普及を目指すなかで、屋根の寿命について考えてみた特集です。

日経ホームビルダー2019年3月号の特集1「短命屋根材の責任」(資料:日経ホームビルダー)
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 特集の冒頭では、日経ホームビルダーが独自取材したニチハ製のスレート系屋根材「パミール」を巡る事故を詳しく報じました。台風で屋根材が飛ばされて、近隣の窓を割るというショッキングな事故です。幸い、窓ガラスが割れた居室には人はいませんでした。

 しかし、窓のそばにあった机の周囲に窓ガラスの破片が飛び散った写真を見ると、「一つ間違えば、大変な事故になっていた」と感じます。

 図らずも加害者となってしまった住宅の建て主は、台風が来る1カ月ほど前に屋根材の一部が落下していると知り、ニチハに連絡していました。建て主からの連絡を受けたニチハも、一部の屋根材を取り換えるなど応急対応を行っています。それでも、事故を防ぐことはできませんでした。

 パミールという製品に関しては、発売から10年ほどの間で落下やズレなどのトラブルが出ていました。この問題を把握したニチハは、屋根材を留めるくぎに欠陥があると判断し、その旨を伝える報道発表なども行ってきました。今でも、ニチハのホームページでは、この問題に関するお知らせを掲示しています。

 ただし、この落下やズレの原因を巡っては、ニチハとくぎメーカーの若井産業(大阪府東大阪市)が、名古屋地方裁判所を舞台にした法廷闘争を繰り広げています。ニチハが若井産業に対して、不具合に関する処理費用の支払いを求めた裁判です。

 裁判のなかで、ニチハは特定のくぎのさび量が多いと指摘し、若井産業は屋根材本体の性能に問題があったと主張しています。ニチハによる提訴から既に6年超が経過していますが、まだ判決には至っていません。

 一方、過去にパミールの補修などを手掛けてきた屋根工事会社や塗装会社の実務者たちは、「建て主はパミールに関する問題に気づいていない」と口をそろえます。建て主が持つ図面には屋根材として他のメーカーの製品が記載されていても、実際にはパミールが使われているケースも存在します。消費者が屋根材の問題を認識することは容易ではないのです。

 それだけに、パミールで施工された屋根が抱えるリスクについて、広く消費者に情報が行きわたることが重要だと考えます。建て主が知らない間に、屋根材の落下やズレのリスクが高まり、近隣の住宅に被害を及ぼすような事態に及んでしまえば、善意の建て主が加害者になりかねません。建て主に対して、屋根材が持つリスクについて気づきを促していくことが肝要です。

 特集ではこのほかにも、屋根材の寿命に関連した建築研究所の暴露実験の結果や、住宅ストックの寿命を延ばすための屋根における具体的な対策をお伝えしています。改めて屋根の長寿命化を考える材料にしていただければと思います。