世間を騒がせた構造計算書の偽造事件、いわゆる「姉歯事件」の後で、建築基準法や建築士法が大幅に改正され、建築設計のシステムが大きく転換しました。消費者保護の施策の柱となったのが、住宅瑕疵担保履行法に基づく保険の仕組みでした。既にこの制度が始まってから10年目に入っています。

 保険の担い手は、国土交通大臣に指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人5社です。ところが、住宅実務者にとって5社の違いは分かりにくい。各社の特徴を簡単に比較できるような資料が見当たらないからです。

 そこで、日経ホームビルダー11月号の特集「瑕疵保険法人10年目の通信簿」では、住宅実務者へのアンケートを独自に実施。保険法人によってサービスや対応などにどのような違いがあるのかを評価してみました。

日経ホームビルダー2018年11月号の特集「瑕疵保険法人10年目の通信簿」(資料:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]

 その結果、5つの保険法人に対する実務者の評価には、特徴があることが浮き彫りになりました。設定した保険料に対する評価が高いところ、窓口の数や近さが評価されているところ、検査の的確さが評価を受けているところなど多様でした。

 特集記事では、こうした独自調査の結果をお伝えするほか、各社が取り組んでいる顧客サービスも取材によって明らかにしました。この記事を機に、保険法人の見直しを図ってみてはいかがでしょうか。顧客側が選択することによって生じる一定の競争は、保険法人の質の向上に寄与すると考えます。

 さらに今号では、最近発生した2つの大きな災害を取り上げた記事を用意しました。1本目はリポート「屋根飛散の二次被害防げ」です。近畿地方を中心に猛威を振るった台風21号による被害状況を現地取材で得た写真や図面などとともに紹介します。

日経ホームビルダー2018年11月号のリポート「屋根飛散の二次被害防げ」(資料:日経ホームビルダー)
[画像のクリックで拡大表示]

 単に被害状況をお伝えするだけでなく、被害が拡大したメカニズムなどについても詳しく解説しています。

 もう1つは北海道を襲った最大震度7の地震による被害を取り上げたリポート「火山灰盛り土で液状化」です。札幌市清田区の住宅地で生じた大規模な液状化被害を中心に、斜面崩壊や建物自体への被害などを報じています。

 最後にもう1つお勧めしたい記事は、使えるニュース「適合義務化に相次ぐ慎重論」です。住宅や建築物の省エネルギー基準への適合義務の在り方を決めていくために、国土交通省が始めた議論の模様をお伝えしています。

 この会合からは、小規模な住宅の2020年までの省エネ基準への適合義務化に対して、国や有識者が慎重な姿勢を示している様子がうかがえます。国交省が準備した資料には「省エネ基準への適合率が低い状況で義務化すると着工が滞るなど市場に大きな混乱を招く」「審査側の体制が不足する」といった趣旨の課題が列挙されていました。

 これらの言葉は、姉歯事件を受けて建築基準法の改正を急いだ際に招いた混乱を思い起こさせます。同じ失敗は繰り返したくないという強い意識が根底にあるのではないか――。そんなふうに感じました。

 一方、住宅の省エネ性能を向上させる意義は、単に居住者の生活の質の向上だけではありません。二酸化炭素の排出量を減らすことに加え、良好な温熱環境の実現によって居住者の健康を保ちやすくしたり、災害時のシェルター機能を高めたりする効用も期待できます。

 安易な現状維持ではなく、よりよい住宅ストックを増やしていくための長期的な施策がどのように議論されていくのか。今後も会合の内容を注視していく必要があります。

出典:日経ホームビルダー、2018年11月号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。