アスペルギルス、ペニシリウム、トリコスポロン…。日経ホームビルダー10月号の特集記事では、こんな耳慣れない名前がいくつも登場します。これらはカビの名前。日経ホームビルダーではこれまで、水に関しては雨漏りや結露、生物に関してはシロアリといったテーマの特集記事を掲載してきました。けれども、「カビ」を前面に打ち出した特集記事にはこれまで取り組んでいませんでした。過去の実績から見ると、今号の特集「住宅に広がるカビ汚染」は挑戦的なテーマです。

日経ホームビルダー2018年10月号の特集「住宅に広がるカビ汚染」(資料:日経ホームビルダー)
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 ではなぜ今になって、日経ホームビルダーでカビを大々的に取り上げることにしたのか。3つの理由があります。

 最初の理由は、西日本を中心に甚大な被害をもたらした7月の豪雨災害、9月上旬に近畿地方で猛威を振るった台風21号など、床上浸水や雨漏りを招く事象が目立ってきた点です。カビの増殖要因となる住宅内への水の浸入リスクが、今まで以上に高まっていると判断しました。

 続いての理由は、断熱性能や気密性能の高い住宅の増加です。近年、住宅内の温熱環境を整えるニーズが高まっています。これまでにないような猛暑が続いたり、室温と健康との関係が社会的に話題になったりして、消費者が住宅内の温熱環境を重要な品質だと捉える機運が高まっている点を重視しました。気密性能が高いと湿気などを逃がしにくい部分が生じ、カビが増殖するリスクにつながるケースも出てくるとみたのです。

 そして、もう一つ。決定的な理由となったのは、カビと健康被害との関係を指摘する医療関係者などの知見が集まり始めたことです。誌面で紹介したカビアレルギーの患者が増えているという専門医の指摘や、カビが生えやすい住環境は有病率も高いという統計調査は、その代表例です。

 日経ホームビルダーによる読者調査では、過去3年間に手掛けた住宅でカビの対応に迫られた実務者は約1割にとどまっていました。しかし、期間をもう少し長くすればこの数字は増える可能性がありますし、そもそも壁内や床下のカビは通常の生活では目につかないので、すぐにはクレームに至らない。日経ホームビルダーでは、潜在的なカビの問題はもう少し深刻なのではないかとみています。

 誌面では、実際にカビの問題に悩まされた住宅事例や、住宅内のカビによって病気に至った事例などを詳しく紹介しています。住宅品質の新しいリスクとして、カビの問題に目を向ける機会にしていただければ幸いです。

 9月6日に北海道を襲った地震では、札幌市内で液状化被害が発生しました。特に同市清田区内では、道路が波打って住宅が大きく傾くなど、非常に大きな被害が発生しています。地震被害の詳細については、さまざまな調査結果などを踏まえて、今後の日経ホームビルダーで取り上げていきますが、10月号ではこうした地域での対策が一筋縄では進まない可能性を示唆するリポート記事を用意しました。

 東日本大震災で多大な液状化被害を受けた千葉県浦安市が進める対策の実情を取材したリポート「『全戸合意』の厚い壁」です。既存の戸建て住宅が立ち並ぶエリアにおいて、液状化対策事業を進める難しさを浮き彫りにしました。

 清田区で生じた液状化被害の細かいメカニズムなどは、浦安市の例とは異なる面も多いでしょう。それでも、宅地の液状化対策が簡単には進まないという点では、教訓となる部分も多いのではないかと思います。

 最後にもう1つ紹介したいのは、日経ホームビルダーが9月25日に発行する書籍「ホントは防げる欠陥住宅」です。日経ホームビルダーの人気連載「現場で役立つ欠陥防止の勘所」を中心に住宅の検査工程別にまとめ直し、教科書代わりに使えるよう読みやすく編集しました。

 欠陥住宅の問題を抱えないようにするためのポイントを、図や写真を多用しながら分かりやすく解説しています。項目別にチェックポイントもまとめているので、現場でも使えます。お近くの書店などで、ぜひ一度お手に取っていただけると幸いです。

日経ホームビルダーが2018年9月25日に発行する「ホントは防げる欠陥住宅」(資料:日経ホームビルダー)
出典:日経ホームビルダー、2018年10月号
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