開口を南北に集約して熱負荷低減

 一般に、床面積に対してできるだけ外皮の表面積を抑え、建物の熱負荷を低減させる設計がZEB化への近道となる。例えば、1階から最上階まで同じ長方形平面を重ねた箱形建物とすれば効率的だ。ところが、エネフィス四国はこうした常道とは対照的に、凹凸の多い建物になっている。

配置図・1階平面図(資料:NTTファシリティーズ)
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各階平面図(資料:NTTファシリティーズ)
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断面図(資料:NTTファシリティーズ)
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 3階建ての建物は、東西18.9m×南北26.1mという長方形平面を基本にしつつ、断面方向と平面方向それぞれに凹凸が多い。会議室と倉庫、蓄電池室などが入る3階部分は、建物の北側部分に寄せている。エントランスホールのある1階は、小さな打ち合わせ室と資材室などを配した以外はピロティ形式の駐車場としている。

 事務室のある2階は、中庭式のバルコニーを組み入れてコの字形の平面とした。中庭を挟んで南北に事務室を並べ、その結び目に階段やエレベーター、設備コアなどが並ぶ。

 「中庭のバルコニーを設けると外皮の面積が増えて熱負荷の面では不利になる。ただしここでは、南側と北側の事務室がそれぞれ2面開口を得られることを優先してあえてバルコニーを配置した」と、設計を担当したNTTファシリティーズエンジニアリング&コンストラクション事業本部プロジェクト設計部の甘粕陽介氏は説明する。植栽やベンチを置いたバルコニーは光と風の取り込み口になると同時に、2つの事務室に分かれた社員の交流の場の役割を担う。バルコニーに出入りしやすくなるよう、開口部は引き違いの掃き出し窓とした。

2つの事務室に挟まれた2階の中庭バルコニー(写真:ダイダン)
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事務室と中庭バルコニーは引き違いの掃き出し窓で結び付けた(写真:ダイダン)
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 計画地は津波浸水区域に立地するため、設計に際しては1階をピロティとし、重要な施設を置かないようにした。電気設備なども上階に配した。3階にはリチウムイオン蓄電システムを設けて、停電時にも2~3日は事務所が稼働できるようにした。2階の事務室を含め凹凸の多い建物形状は、BCP対策を踏まえた上で各階に必要な室を配した結果生まれたものだ。

 同時に、ZEBを実現する大前提となったのが、熱負荷を低減する建築設計上の基本的な工夫だ。

 鉄筋コンクリート造のエネフィス四国は、主な外壁と屋根にポリスチレンフォーム断熱材(厚さ35mmなど)を施し、開口にLow-E複層ガラスのアルミ樹脂複合サッシを採用した。外皮性能を示すBPI(PAL*の削減率)は0.59。もともとはエネフィス九州と同等のBPI=0.70を目指して各仕様を設定したが、結果的に0.11ポイントの性能アップとなった。

 甘粕氏は性能向上に結び付いた理由として、開口部の設け方と方位への配慮を挙げる。開口については、法的に必要な箇所を除いて東西面をほぼ閉じた上で、南北面に集約した。このうち南面では、道路に面して設けたバルコニーの庇(ひさし)で夏の日射を遮り、窓の内側に設けた電動ブラインドで日射をコントロールしている。

南面に深い庇を持つバルコニーを設けた(写真:ダイダン)
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 設計に際しては、断熱材の位置にも注意を払った。外壁では外断熱と内断熱を使い分けている。躯体(くたい)蓄熱を採用した2階の事務室周りは外断熱とし、その他では費用対効果を考慮して内断熱を採用した。外断熱と内断熱の境界部分では断熱材のラインが途切れ、熱橋を生じやすい。ここでは外側と内側の断熱材が600mm重なるように設置することで熱損失の抑制を図った。

断面スケッチ。外壁部位によって外断熱と内断熱を使い分けた(資料:NTTファシリティーズ)
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