ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅の実現には再生可能エネルギーの導入が不可欠だ。戸建て住宅で太陽光発電はどう活用すればいいのか。前編に続き、住宅の省CO2化に取り組むP.V.ソーラーハウス協会の南野一也氏と、気象条件が厳しい北海道でLCCM住宅認定を取得した棟晶の齊藤克也氏が、省エネ住宅を取り巻く現状と課題について対談した(対談は2018年7月26日に実施)。

住宅の省CO2化に取り組むP.V.ソーラーハウス協会会長の南野一也氏(右)と、札幌市で高性能住宅を手がける棟晶常務取締役の齊藤克也氏(写真:新津写真)
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前編は「高断熱と省CO2は異なる」という話で終わりました。

齊藤 克也氏(以下、齊藤) 北海道の住宅会社にはびこる断熱一辺倒の考え方には、私も疑問を感じています。実際、多くの住宅会社は建設時のCO2を軽視しがちですし、断熱を強化すれば太陽光発電は不要だと考える人もいる。

 断熱で削減できるのは主に暖冷房のエネルギーで、それをゼロにするのは技術的には難しくありません。ただ、そこで満足して立ち止まってしまう住宅会社が多い。本当の課題は給湯や他のエネルギーの削減をどうするかなのですが。

南野 一也氏(以下、南野) 北海道は戦後、住宅の断熱性能の向上に取り組んできた歴史があります。北海道は高性能住宅のパイオニアで、日本の住宅の高性能化をリードしています。

 その自負があるので、新しい要求に抵抗を感じるのは当たり前です。道内の住宅会社同士の連携も強く、技術力は高いので、今後は一気に変わる可能性も感じています。繰り返しになりますが、快適性と省CO2は別の話です。そこはしっかり整理してほしいですね。

齊藤 こういう話になりがちなので、当社はもうZEHを卒業し、申請を行なっていません。さらに先を見据えて、全棟LCCMを実現可能な体制を整えています。

 当社では以前から家族4人が使うすべての電気代、家電の消費電力も燃費計算に組み込んできました。そこにプラスする太陽光発電は、蓄電を含めてその家で消費する。つまり「太陽光発電導入=蓄電池導入」です。先にも述べましたが、理想は電気を買わないこと。技術的には可能だと思いますが、実証実験も必要なのでいまだ格闘中といったところです。

地球温暖化を防ぐための国際的な枠組み「パリ協定」で、日本は温室効果ガスを2013年度比で2030年までに26%削減すると表明しました。家庭部門(住宅)は約39%削減しなくてはなりません。

南野 棟晶はリーダー的な存在なのでZEH申請はぜひ行ってほしいのですが、自家消費に向かうのは正しい方向性だと思います。当面はZEH普及の形で市場が拡大するでしょう。ただ、ある住宅メーカーは大量のZEHを建設していますが、その会社の一昨年のZEH率は74%で昨年は76%です。あれだけPRしてがんばっていても年間2%増です。私は「4分の1の壁」が近づいているのだと見ています。

 ZEHも太陽光発電も不要という層が4分の1はいます。こうした層を含めた住宅市場で、「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」と掲げた国の目標を達成するには、ゼロエネルギーだけではなくマイナスエネルギー、つまりLCCM住宅を普及させる必要があります。

 パリ協定の約束目標を実現するには、既存住宅のZEH化が必須です。ある時期からは「既存住宅はZEH、新築はLCCM」という流れになるのではないでしょうか。

 それと並行して、国の太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)において、定められていた10年の買い取り期間が終了し始めます。スタート時点で48円/kWhだったのが11円/kWh程度になるのではないかと噂されています。今の買電価格は、昼間で東京電力は30円程度、北海道電力は40円程度。それを考えると、大方は棟晶が目指す自家消費に移行するのは間違いないでしょう。

 こうした動きが2030年まで進み、その後はVPP(バーチャル・パワー・プラント)の時代を迎えるはずです。家で発電した電力を自家消費だけなく、地域でシェアしコントロールする時代の到来です。その制御技術が日本ではまだ不十分なのですが、一方、ドイツはVPP関連企業だけですでに500社以上あり、淘汰の時代を迎えています。日本の技術が確立された頃には、ドイツや海外のシステムが世界市場を席巻している可能性が高い。スピードアップが求められます。

自分たちの立場では何をすべきでしょうか。

南野 私たちは住宅会社を育成する立場なので、そのための支援を行なっています。ZEH普及が当面の業界の命題であるなら、会員企業はZEHの普及率を少しでも上げ、できればZEHビルダーの5つ星を獲得し、自社ブランドとZEHをうまくリンクさせて、自分たちが優れた住宅供給者であることが市場で認知される体制を築く。そこを地道に目指していってほしいと思っています。

齊藤 私は太陽光発電自体は良いシステムだと思っています。北海道の暮らしはエネルギーを使うので、1Wでも発電量が多く、1円でも安いモジュールを使いたいという気持ちがあります。むしろ全棟導入したいくらいです。

 しかし当社としては、CO2削減を太陽光発電だけでなくトータルで考える姿勢を示していきたい。太陽光発電は「ジョーカー」なので、確実に簡単に効果が得られますが、切り札は手札として残しておく。

 今、私たちがいる建物は、当社の普及版高性能住宅で「腹八分目の高性能」ですが、太陽光発電パネルを載せるとLCCM住宅になるよう計算しています。そのための設備・配線計画も備えているので、あとは必要に応じてジョーカーを切るだけです。

2018年6月、札幌市豊平区に完成した棟晶の普及版高性能住宅「中の島プロジェクトA棟、B棟」。設計はSiZE(福岡市)。木造2階建て。延べ床面積は両棟ともに107.24m2。販売時は太陽光発電は未導入だが、屋根面に必要量を搭載すればLCCM住宅になるよう設計している。対談はA棟の2階で行った(写真:棟晶)
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「中の島プロジェクトA棟、B棟」の南側外観(写真:棟晶)
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