2018年の猛暑をきっかけに、学校にエアコンの導入が進みそうだ。文部科学省は19年度予算の概算要求で、公立学校の施設整備に18年度予算の約3.6倍にあたる2432億円を盛り込んだ。教室へのエアコン導入や危険なブロック塀の安全対策、トイレ改修などを促す。

文部科学省は2019年度概算要求のうち、「公立学校施設の安全対策・防災機能の強化等の推進」に2432億円を盛り込んだ(資料:文部科学省)
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 17年4月時点の文科省の調査によると、公立小中学校の普通教室の空調(冷房)設備設置率は全国平均で49.6%にとどまる。寒冷地域の北海道や東北各県は設置率が低い。その一方で、温暖地域でも東京都(99.9%)や香川県(97.7%)などは設置がほぼ完了しつつあるが、愛媛県(5.9%)や奈良県(7.4%)、静岡県(7.9%)、長崎県(8.6%)などは設置が進んでいない。

小中学校の空調(冷房)設備の設置状況(資料:文部科学省)
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 概算要求が通れば、こうした設置率の低い自治体を中心にエアコンを導入する動きが加速する。相次ぐ異常気象で「命の危険がある暑さ」が続く中、子どもたちに我慢を強いることなく健康を守るための必要な措置だといえる。

 ただ、エアコンありきの改修が学校で進むことに危うさを感じる。

 日本建築学会学校空気環境調査WGの05年調査によると、北海道や東北地方より南方の地域では校舎の40~60%に断熱材が設けられておらず、ほとんどの窓は単板ガラスだった。

 公立学校施設の耐震改修は15年度でほぼ完了したが、その他の改修は進んでいない。築25年以上を経過し、改修が必要な公立小中学校の面積は全体の約7割を占める(17年5月時点)。日本建築学会の調査から10年以上がたっても、校舎の断熱性能の向上は図られていないことが推察できる。

 窓や外壁、屋根など外皮の断熱性能が向上すると、室内の環境が外気に影響されにくくなり、室内を快適に保つための暖房や冷房に必要なエネルギーを減らすことができる。その結果、エアコンの数や能力は小さく済み、エアコンを設置するイニシャルコストが下がる。設置後も、光熱費、維持管理費、設備更新費、廃棄物処理費などのランニングコストが低減できるようになる。

 庇や外付けルーバーなど、日射遮蔽も有効だ。例えば高窓の下部に中庇を設置すれば、夏季は日射熱の侵入を抑制できるとともに、冬季は太陽光を天井面に反射させて室内照度を均一化するライトシェルフとしての機能も期待できる。

 温熱環境がおだやかに整えられて快適になった教室は、子どもたちの健康な身体を育む。勉強もはかどるようになるだろう。断熱改修せずエアコンだけ設置すれば、こうした恩恵は得られない。

 それ以前の問題として、もし異常気象下の真夏や真冬に災害が起きて停電したらどうするのか。エアコンは動かない。学校は避難所としての役割も期待されているが、我慢できない暑さ・寒さでは使いようがなくなる。

 実際、9月6日に起きた最大震度7の北海道胆振東部地震では道内全域の約295万戸が、9月4日に上陸した台風21号では西日本を中心に約260万戸が停電した。大規模な停電は自然災害の発生が懸念される他の地域にとっても人ごとではない。断熱改修しておけば、停電時でも被災者の過酷な状況を和らげてくれる。