建設会社は合併によるメリットが少ないと言われます。2社が1社になれば、単純に入札参加の機会が半分になる。完成工事高が大きくなると入札参加資格の「等級」が上がる半面、それまでより規模の大きい会社と競争しなければならなくなる――。これまで多くの建設会社が合併に積極的でなく、経営不振に陥った会社を救済するために「仕方なく」というケースが多かった気がします。

 しかし最近、“前向き”な事例が目立つようになってきました。事業承継や成長戦略の一手段として、M&A(合併・買収)にチャレンジする会社が急増しているのです。日経コンストラクション3月25日号では、特集「えっ、こんなにあるの!土木のM&A」を企画。約100件に及ぶM&Aの実例を一挙公開します。近い将来、あなたの勤めている会社が当事者になる日が来るかもしれません。

日経コンストラクション3月25日号特集「えっ、こんなにあるの!土木のM&A」から
[画像のクリックで拡大表示]

 M&Aの動機の1つが業容の拡大。例えば、橋梁保全工事で高いシェアを誇る小野工業所(福島市)は、2015年から積極的にM&Aを仕掛けています。東日本大震災後、工事に使う鋼製部材の調達が難しくなった経験から、鉄骨加工会社や塗装会社を相次いで子会社化しました。これによって施工だけでなく、橋の補修・更新に必要な部材や桁の供給まで、グループで内製化できる体制が整いました。子会社化した企業では、一人親方や派遣社員も正規雇用して月給制に統一するなど、働く人にとってもメリットがあるM&Aだったといいます。

 もう1つの大きな動機が事業承継です。特に近年は、後継者不在で“バトン”を渡す相手がおらず、廃業の道を選ぶ建設会社が少なくありません。小野工業所が買収した会社の中にも、事業承継に悩んでいる会社が複数ありました。従業員の雇用や会社が培ってきた技術を守る手段として、M&Aは買われる側だけでなく、買う側にとっても魅力的な選択肢なのです。

 特集記事では、建設コンサルタント会社の事例も数多く取り上げています。建設会社のように一般紙などで話題になることはまれですが、建設会社を買収したり、海外のコンサルタント会社を傘下に収めたりと、大きな動きが相次いでいます。建設会社の方だけでなく、建設コンサルタントの方もぜひ特集記事をお読みいただき、M&Aを身近に感じていただければと思います。

 さて、バトンを渡すといえば、日経コンストラクションは4月1日付で編集長が交代いたします。野中が退任し、現・日経ホームビルダー編集長の浅野祐一が新たに編集長に就任します。これまで以上に魅力的なコンテンツをお届けして参りますので、これからも日経コンストラクションをよろしくお願いいたします。

出典:日経コンストラクション、2019年3月25日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。