「初動72時間」、「72時間の壁」――。最近頻発している災害の報道の中で、耳にする機会が多かったキーワードではないでしょうか。災害発生から被災者が救助されるまでの時間が72時間を超えると、生存率が大きく下がる現象を指しています。

 初動が遅れれば人命が危機にさらされるだけでなく、復旧の遅れを招き、住民の生活や地域の経済活動にも甚大な影響を及ぼします。災害が激甚化し、頻度が高まっていくなかで、土木技術者の発災直後の行動はこれまでになく重要になっていきます。日経コンストラクション3月11日号では特集「『想定外』を迎え撃て」を企画し、昨年発生した災害への対応を追いながら、発災後に一人ひとりがどのように動くべきなのか、考えてみました。

日経コンストラクション3月11日号特集「『想定外』を迎え撃て」から
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 2018年7月に各地で猛威を振るった西日本豪雨。岡山県倉敷市内では、小田川の堤防が2カ所で決壊するなどして、1200haにわたって浸水する大きな被害を受けました。国土交通省岡山河川事務所ではこうした堤防決壊に備えて、毎年机上訓練をしていましたが、同事務所の今岡俊和副所長は「2カ所同時の決壊は考えておらず、非常時に何が起こるのか、イマジネーションが足りなかったと痛感した」と振り返ります。

 「荒締め切り」を構築して応急復旧する方針は決まったものの、着工してすぐに難題に見舞われました。1つは資材の不足。決壊が2カ所に及んだことで、備蓄していた資材だけでは全く足りず、県外からの調達を余儀なくされました。もう1つは交通網のまひが想定以上だったこと。机上訓練ではダンプトラックの通行量を平時の8割程度確保できると踏んでいましたが、救急活動や住民が運転する車両があふれ、思惑通りに進みませんでした。それでも、荒締め切りの施工手順を変え、比較的調達しやすい土砂を使った盛り土を先行して完成させる方法で乗り切り、1週間で応急復旧を果たしました。

 建設会社も自治体も、災害時には社員や職員を守るだけでなく、まず最初に被災地に入り、応急復旧に当たらなければなりません。BCP(事業継続計画)を定めていたとしても、社屋や庁舎が被災したり、人員が現場に駆け付けられなかったりという事態が十分に考えられます。

 岡山の事例のように、被災現場では様々な想定外の事態が起こり、事前に思い描いていた通りの行動をとれないことの方が多いでしょう。それでも、被災地での教訓を生かし、発災直後の具体的な被害状況や自分たちの行動を日ごろからイメージしておくことが、「72時間」を有効に生かすためには欠かせません。

出典:日経コンストラクション、2019年3月11日号
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