会計検査院が毎年秋に発表する「決算検査報告」。国の各府省や政府関係機関が税金を適切に使っているかを会計検査院がチェックし、その結果を取りまとめたものです。公共事業に携わる人にとってはおなじみの報告書で、検査員が行う検査の対応に四苦八苦された経験をお持ちの方が少なくないかもしれません。

 例年、土木工事の設計や施工に関する指摘は、10~20件程度。指摘されるのは税金の使い方の問題点ですが、土木関連の指摘はほぼ「設計ミス」や「施工ミス」です。「設計(または施工)が適切でなく、税金を投入して整備したインフラが想定通りの効果を発揮していない」というのが指摘の根拠です。

 つまり、会計検査での指摘事例をストックしていけば、毎年十数件の「ミス事例」がたまっていくことになります。これをミス防止に生かさない手はありません。そこで日経コンストラクション2月25日号では、過去10年間の会計検査での指摘事例を分析。特集「『考えない』がミスを生む」にまとめました。

日経コンストラクション2月25日号特集「『考えない』がミスを生む」から
[画像のクリックで拡大表示]

 本誌が調べたところ、過去10年間で土木工事関連の指摘は145件ありました。上の写真に示した通り工種は様々なのですが、共通するのは「なぜこんなことになってしまったのか…」と思われるミスが多いことです。

 例えば、「護岸工事で基礎を掘削する際、隣接する民地に影響が及ぶ恐れがあったので、護岸の根入れを81cm浅く変更してしまった」という島根県のケース。施工者から要請があった設計変更を、県の担当者が承認していました。取材をしてみると、県の担当者は根入れ深さの基準となる面を誤って認識していて、根入れを浅くしても基準を満たすと勘違いしていました。こうした、「基準に関する勘違い」は起こりがちなミスと言えます。

 とはいえ、少し考えれば「何かおかしい」と気付くはずです。81cmも基礎を浅くしても“持つ”とすれば、元の設計はかなりの過大設計だったことになる――。基準面を間違えたことはもちろんミスですが、問題の根はもっと深いところにあったと言えるでしょう。

 元会計検査院調査官の芳賀昭彦・経済調査会参与は、会計検査で指摘を受けた現場を回ってミスの調査をするなかで、発注者と受注者の双方が現場についていかに深く考えていないかを痛感したと言います。ぜひ特集記事をお読みいただき、「これはレアケースだから」と片付けずに、自分の仕事を振り返るきっかけにしていただければと思います。

出典:日経コンストラクション、2019年2月25日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。