2018年は自然災害に関する報道が多く、それ以外の話題が埋もれてしまった感があります。例えば、イタリア・ジェノバで発生した高速道路の崩壊事故。斜張橋が崩落して43人が死亡するという大惨事でしたが、日本には詳細が伝わってきませんでした。

 しかし、先進7カ国(G7)で供用中の長大橋が崩落し、これだけたくさんの死者が出たというのはかつてなかったことです(2007年に発生した米国ミネアポリスの橋梁崩落事故でさえ、死者は13人でした)。また、単に死者が多かったというだけでなく、橋の構造や維持管理の在り方、補修・補強の妥当性など、日本の土木技術者への教訓が、実は数多く含まれていました。

 そこで日経コンストラクション12月24日号では、特集「イタリア『モランディ橋』はなぜ落ちた?」を企画しました。日本で報道されていない橋崩落の真実に迫ります。

日経コンストラクション12月24日号特集「イタリア『モランディ橋』はなぜ落ちた?」から
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 橋の名称は「ポルチェベーラ高架橋」ですが、著名な構造エンジニアの故リッカルド・モランディが設計したことから、モランディ橋とも呼ばれています。完成は1967年。コンピューターで複雑な解析ができない時代だったことから、現代の斜張橋のように何本も斜材を設けずに、上の写真のように2対の斜材だけで桁を吊る形式になっています。ゆえに、斜材が1つ失われるだけで崩壊に至る恐れがあったのです。崩落のメカニズムはまだ特定されていませんが、斜材の破断が引き金になったことが有力視されています。本誌では、現地調査などを基に関文夫・日本大学教授らが推測した崩落過程のCG画像を掲載しました。本邦初公開です。

 モランディ橋は日本ではあまり見かけないタイプの橋ですが、だからといって日本の橋は安心かといえば、そうではなさそうです。プレストレスト・コンクリート(PC)橋設計の第一人者である三井住友建設の春日昭夫副社長は、日本にも「アキレス腱」を持つ橋はあると指摘します。

 一例として挙げるのが、日本に40例ほどあるとされる「ドゥルックバンド」と呼ぶ形式の橋。桁の端部と橋台を鋼棒でつなぎ、中央をヒンジとしてスパンを確保した形式です。手計算で設計できるメリットから60~70年代を中心に造られましたが、橋台と桁を留める鋼棒が破断すると、中央部が垂れ下がったり落橋したりする恐れがあるといいます。ただ、日本の技術者でもこの形式について知らない人が多く、今後の維持管理や補修・補強に困難が伴うことが予想されています。

 「その時の最先端の技術を持ってしても『アンノウン・ファクター』(未知の因子)が存在する。次の時代の技術者がきちんと手当てをしていかないと、同様の事故が繰り返される」(春日副社長)。イタリアの事故を“対岸の火事”で済ませずに、日本のインフラ維持管理の教訓として受け止めたいものです。

出典:日経コンストラクション、2018年12月24日号
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