自然災害が多発した2018年。日経コンストラクションでも例年に比べて、災害報道に多くのページを割きました。

 今年の災害で改めて分かったのは、「逃げる」ことの難しさではないでしょうか。例えば豪雨災害で、風雨が激しい夜間に避難指示が出ても、屋外への避難は容易ではありません。西日本豪雨の際には、国土交通省と自治体との間で情報共有や、自治体から住民への情報伝達がうまくいかず、被害が拡大した例がありました。

 ハード整備による「守る」対策は万能ではなく、さらに「逃げる」のも難しいとなれば、どんな対策が求められるのか。日経コンストラクション12月10日号では、特集「さらば、災害リスク」を企画し、「守る」、「逃げる」に続く被害防止策について考えてみました。

日経コンストラクション12月10日号特集「さらば、災害リスク」から
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 西日本豪雨の後に国土交通省が開催した「実効性のある避難を確保するための土砂災害対策検討委員会」の第1回会合で、興味深い事実が明らかになりました。西日本豪雨による土砂災害の犠牲者のうち、被災位置が特定できた107人について調べてみると、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)などの危険な場所で亡くなった人の割合が9割近くに上っていたというのです。

 北海道地震では、札幌市清田区の住宅街で、大規模な液状化被害が発生しました。既報の通り、被害が大きかったのは「谷埋め盛り土」で造成した地区。谷埋め盛り土の液状化は、阪神大震災や東日本大震災をはじめ、これまでたびたび発生している現象です。

 危険な場所に住んでいる限り、たとえ住民は逃げられたとしても、住宅の被害は避けられません。それならいっそのこと、危険な場所に住むのをやめればいいのではないか――。それがこの特集の大きなテーマです。災害を防ぐ「防災」が難しいなら、あらかじめ被害を受けない場所に移転して災害を「免れる」、いわば「免災」という考え方です。

 とはいえ、誰もが簡単に引っ越せるわけではないし、私権の制限を伴う強制的な移転は現実的ではありません。そこで国や自治体は、移転に対して補助金を支給するなどして、住民を安全な土地に「誘導」する施策を取り始めています。熊本県では「土砂災害危険住宅移転促進事業」を創設し、危険区域に住む住民に対して、住宅の解体や移転にかかる費用のうち最高300万円の補助を出しています。

 「税金を個人の資産に投入していいのか」という批判があるかもしれません。しかし、例えば急傾斜地崩壊対策事業の補助要件が、10棟以上当たり7000万円以上であることを考えれば、十分に“お得”と言えますし、なにより被害を完全に防ぐことができるメリットがあります。多くの自治体で、こうした制度が広がることを期待したいものです。

出典:日経コンストラクション、2018年12月10日号
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