「世界初の本格的な海上空港」と称される関西国際空港。2017年度の旅客数は約2800万人を数え、外国人入国者数は日本全体の3割弱を占めています。

 そんな「日本の玄関口」である関空が、今年9月の台風21号で大きな被害を受けました。今年は全国で自然災害が多発しましたが、関空の被害はそれらの中でもかなり特徴的だったと言えます。500haに及ぶ人工島が高潮と高波で浸水したこと、対岸とを結ぶ連絡橋にタンカーが衝突して動線が絶たれたこと、それらの影響で空港の機能が数日にわたって完全に停止したこと――。日経コンストラクション10月22日号では特集「関空水没」を企画し、この特筆すべき災害について、災害状況や復旧の経緯、浮かび上がってきた課題を整理しました。

日経コンストラクション10月22日号特集「関空水没」から
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 被害を生んだ大きな要因は、空港が大阪湾の沖合5kmを埋め立てて造った海上空港だった点にあります。水深は約20m。その海底に、厚さ20m前後の軟弱な沖積粘土層があり、その下に粘土と砂が交互に堆積する洪積層が横たわっています。沖積粘土層はサンドドレーン工法で地盤改良しましたが、深い位置にある洪積層への対策は難しく、開業後の圧密沈下も想定して地盤高を上げ越しておくことで対応しました。

 先に開業した「1期島」では、沖積粘土層の沈下が埋め立て工事中のわずか1年足らずに収束したものの、洪積層の圧密は収まりませんでした。今も年間6cmほどのペースで沈下が進み、1期島にあるA滑走路の標高はわずか1.4~4mしかない状態です。防潮堤の整備や護岸のかさ上げが行われていましたが、一部の区間では滑走路近傍の高さ制限に引っかかり、対応が遅れていました。

 今回の災害で復旧などに要した損失額は、100億円を超えるとの見方もあります。一般的な土木インフラなら税金を投入して復旧するわけですが、関空の場合はどうなるのか。ご存じの通り、関空はコンセッションによって民営化され、16年4月から関西エアポート(大阪府泉佐野市)が運営を始めています。

 コンセッション事業の実施契約では、滑走路やターミナルビルを所有する新関西国際空港会社と、運営する関西エアポートとの間で、災害に対するリスク分担が定められています。ただし、今回の被害を不可抗力とみるか、それともかさ上げの遅れが原因だったとみるかによって、費用負担の割合が変わってきそうです。費用負担を巡る協議が本格化するのはこれから。インフラ運営の切り札としてコンセッションに注目が集まるなか、協議の行方は今後の事業の広がりにも影響しそうです。

出典:日経コンストラクション、2018年10月22日号
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