6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、8月の台風21号、9月の北海道地震――。日本は4カ月連続で、大規模な自然災害に見舞われています。今後も豪雨災害や巨大地震の発生が予測されるなか、陳腐な表現ですが、今年の災害で得られた教訓を防災事業の糧にすることが重要です。

 実際、防災や災害対応の在り方について、多くの教訓が得られました。日経コンストラクション10月8日号では水害に焦点を当て、特集「何が足りない?水害対策」を企画。水害対策の課題や教訓を整理しました。

日経コンストラクション10月8日号特集「何が足りない?水害対策」から
[画像のクリックで拡大表示]

 水害の大きな特徴は、いつ来るか見当が付かない地震と違い、事前にある程度の精度で被害を想定できる点。水害そのものは防げなくても、避難することで人的被害は大きく軽減できます。洪水を対象としたハザードマップは全国の98%の市町村で公表済み(2017年3月末時点)なので、自治体から避難情報が発せられれば、住民はこれを参考にして迅速に避難することができる、はずでした。

 しかし、西日本豪雨ではその通りになりませんでした。例えば、肱川(ひじかわ)流域の愛媛県大洲市は4万5000人を対象に避難指示を出しましたが、避難所などに集まった人は約1500人。同じく避難指示を出した広島県三原市では、9万5000人の人口に対して避難者は約2000人。避難所以外に避難した人がカウントされてないとはいえ、避難率が3%前後というのは低すぎる気がします。

 避難者が少なかった理由として、河川管理者や自治体からの情報の出し方にまずかったという点が指摘されています。例えば三原市では、沼田川を管理する広島県から氾濫危険水位に達したと情報を受けたものの、避難指示を発令した後だったので水位情報を住民に伝えていませんでした。

 肱川の鹿野川ダムを管理する国土交通省四国地方整備局は緊急放流の直前に、下流域の浸水被害についてシミュレーションして浸水する区域や戸数を予測していましたが、自治体や住民に周知していませんでいた。シミュレーションの精度が低いことに加え、予測した区域が浸水想定区域図より狭かったことが要因でした。より広い範囲の危険を示す浸水想定区域図を基に避難してもらう方が安全だと考えたといいます。

 しかし、住民にとってはどうでしょう。おそらくだいぶ前に作られたであろう1枚の地図と、当日の豪雨を基にしたシミュレーション結果。より切実なものとして住民に受け止められるのはどちらでしょうか。

 避難率が低いのは、「どうせ大したことにはならない」と高をくくっている人が多いからでしょう。「空振りを恐れずに情報を出していく」という姿勢は浸透してきましたが、重要なのは出し方。住民に響くリアリティーのある情報を出さなければ、避難行動には結び付きません。

出典:日経コンストラクション、2018年10月8日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。