西日本各地を襲った豪雨災害から1カ月。広範囲かつ大規模な土砂災害と水害によって、豪雨災害としては平成最悪の人的被害が発生しました。インフラへの被害も甚大で、JR線や高速道路の一部では、復旧までに相当の時間がかかるとみられています。

 被害の状況や対策の在り方をつぶさにお伝えすべく、日経コンストラクションでは記者を現地に派遣するとともに、各分野の専門家に取材。8月13日号で、36ページにわたる緊急特集「西日本豪雨の衝撃」をまとめました。

日経コンストラクション8月13日号緊急特集「西日本豪雨の衝撃」から
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 この災害で目立ったのが、土石流による住宅街の被害でした。広島県内では実に471件もの土砂災害が発生し、これによって86人が亡くなっています(7月30日時点)。住宅街のすぐ裏手で発生した土石流が、次々と人家をのみ込んでいきました。

 ご存じの通り、広島では4年前にも大規模な土砂災害が発生しています。これを契機に土砂災害防止法が改正され、各都道府県は土砂災害危険区域の指定を急いでいるところです。加えて、砂防堰堤などの整備も各地で進みました。しかし、4年間ではできる対策に限界もあり、再び同じような被害が生じてしまいました。

 下に示したのは、今回大きな被害を受けた広島県坂町(さかちょう)小屋浦地区の航空写真。広島市やその周辺には同様の立地の住宅地が多数、存在します。また、全国で指定されている土砂災害警戒区域は53万カ所(2018年3月末時点)に及びます。土砂災害防止法に沿って対策を進めても、到底追い付ける数とは思えません。

7月9日に撮影した広島県坂町(さかちょう)小屋浦地区。山間のわずかな平地に住宅が密集し、山に向かって開発が進んでいった状況がうかがえる。図中の文字などは日経コンストラクションが加筆(写真:国際航業、パスコ)
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 砂防施設の整備など「ハード」面の対策と、避難を促すための情報提供といった「ソフト」面の対策を、両輪で進めていかなければなりません。しかし、今回の被災地の立地を見ると、“その先”の対策を考えていかなければならない時期に来ている気がしています。それは、居住規制です。

 国土交通省では、「がけ地近接等危険住宅移転事業」などを利用して、土砂災害の危険がある場所に立地する住宅の移転を促進しています。ただし、あくまで「居住者自身の自助努力による住宅の移転を支援」する制度。国土交通白書によれば、16年度にこの制度を利用して除却された住宅は40 戸、移転先に新たに建設された住宅は18 戸にとどまります。

 私権制限を伴う居住規制は、安易に実施できるものではありません。ですが、これから人口減少が加速していくことを踏まえれば、将来の街づくりの在り方と併せて議論していく必要があるのではないでしょうか。

出典:日経コンストラクション、2018年8月13日号
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