リニア中央新幹線の談合事件を受け、新たな再発防止策を打ち出した大林組。その内容を巡り、業界や有識者の間に波紋が広がっています。

 なかでも話題になっているのが、「同業者が同席する懇親会などについて、業界団体や学会、発注者などが主催する公式の行事以外は原則として参加禁止」という対策。同業者との飲み会が原則禁止になったというわけです。

 襟を正すのはもちろん重要。でも、法令違反に関わっていない人がここまで窮屈な思いをする必要があるのか――。こう感じている人も多いのではないでしょうか。日経コンストラクション7月9日号では、この件を1つのきっかけとして、特集「なめてませんか?コンプライアンス」を企画しました。コンプライアンス(法令順守)に対する世間の目が厳しい昨今、法令違反が会社や個人に及ぼす影響や、その防止策について考えてみました。

日経コンストラクション7月9日号特集「なめてませんか?コンプライアンス」から
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 会社ぐるみで法令違反を行えば、取引先や消費者の信用を失い、倒産に至ることが珍しくありません。帝国データバンクの調査によれば、2012年度以降、毎年200社以上が意図的な法令違反などが要因で倒産し、そのうち建設会社が50社前後を占めています。

 法令違反の当事者でなくても、“道連れ”になるケースがあります。特集記事では、建設機械や車両のレンタル・販売を手掛ける会社の不正取引の影響が他社にも波及し、大型の連鎖倒産を引き起こした事例を取り上げました。自社や自分だけでなく、取引先や顧客のコンプライアンスまで気にしなければならない時代になったと言えるでしょう。

 さて、先の大林組の再発防止策ですが、疑問の声が上がっているのは、業務範囲外の行為に制限をかけることの妥当性について。私も、私的な行為なのだからこそ会社が強制するのではなく、個人の倫理観に任せるべきではないかと考えています。半面、既に談合事件があった以上、会社が“性善説” に立ちきれない気持ちも分からなくはありません。

 日ごろ、技術者倫理について気にしている人はほとんどいないでしょう。しかし、良くも悪くも話題となった大林組の再発防止策は、「倫理か強制か」という問題を投げ掛けました。技術者倫理について改めて考えるきっかけになればと思います。

出典:日経コンストラクション、2018年7月9日号
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