揺らぐ護岸の“安全神話”

 兵庫県が浸水の原因の調査に着手すると、南芦屋浜の護岸の“安全神話”が揺らぐ事実が次々に発覚した。浸水時に付近の最高潮位は、県が高潮の浸水予測で設定した最高潮位を下回っていたこと、浸水予測で前提とした護岸は実際よりも高い不正確な数値だったこと、そして被災後に実測した現在の護岸の高さも完成時より0.1~0.4mほど沈下していたことだ。

■南芦屋浜の護岸の高さと潮位
東京湾平均海面(TP)を基準にした数値。兵庫県の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 県は学識者の協力を得て南芦屋浜の護岸をかさ上げし、浸水の再発を防止する方針だ。しかし、地球温暖化などの気候変動で高潮や高波はさらに激化する恐れがあるとされ、どこまでかさ上げすれば安全かの見極めは難しい。他方で、かさ上げの高さ次第では低層住宅からの海の眺望が損なわれ、住民から新たな不満の声が上がる恐れもある。

住宅の立地に「免災」を提言

 人間が人生で最も長い時間を過ごし、休息を取る住宅が立地するのは本来、自然災害のリスクが最小限の土地であることが望ましいだろう。住宅の設計・施工者が土地に施す災害対策は通常、敷地内限定の地盤の調査や改良工事などにとどまる。敷地の外から襲い掛かる水害や土砂災害にまで配慮した対策を講じることはめったにない。

 一方、水害に対する護岸や堤防、土砂災害に対する砂防堰堤(えんてい)や擁壁といった現在の土木インフラは、災害リスクを将来にわたって確実に“完封”できるほど強靭(きょうじん)ではない。災害発生時の公共施設への避難も、高齢化と災害の激化が進むなかでは不安を伴う。

 日経コンストラクション12月10日号の特集「さらば、災害リスク」では、この南芦屋浜など幾つかの事例を基に、災害への第3の対処法として、安全な土地への居住などで災害リスクを回避する「免災(めんさい)」を提言する。自然災害が多発した2018年、土木インフラによる災害対策だけでは被害軽減に十分でないことが露呈した。これからは、土地利用や都市計画を総動員して災害対策に取り組む必要があるのではないだろうか。

 できればこの特集は普段の読者に加え、住宅専門誌の日経ホームビルダーや建築専門誌の日経アーキテクチュアの読者にもご一読いただきたいと願っている。

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(関連情報:日経コンストラクションの紹介兵庫県:大阪湾港湾等における高潮対策検討委員会 尼崎西宮芦屋港部会