(写真:大上 祐史)
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 多くの観光客などで年中にぎわう東京・お台場。そこから南東に2.5kmほど離れた観光客がほとんど訪れることのない東京港で、全長930.8mの海底トンネルがつながった。お台場に隣接する有明地区から中央防波堤地区までを結ぶ「東京港臨港道路南北線」の一部となる。

 臨港道路南北線は2020年7月までの開通を目指す。同月から始まる東京五輪では、関係者の輸送ルートとしての活用も視野に入れる。
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 東京港は中央防波堤外側地区にコンテナターミナルが新たに整備されるなど、貨物取扱量が年々増加している。しかし、中央防波堤地区から南北方向のアクセスが青海縦貫道路(第二航路海底トンネル)しかなく、コンテナを運ぶトレーラーなどで慢性的な渋滞が生じていた。東京ゲートブリッジが12年2月に開通したことで混雑は若干緩和したものの、コンテナターミナルの整備が進むと、周辺の交通量はさらに増えると予想される。

(資料:国土交通省)
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 臨港道路南北線の海底トンネルは、沈埋函と呼ぶ巨大な箱形の躯体を海中に沈めて接合する沈埋トンネル工法を採用した。沈埋函は造船所のドックなどで製作。完成後に現地へ曳航(えいこう)して、海底に沈めた。
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 沈埋トンネル工法には3つの特徴がある。1つ目は、海底の浅い場所に設置できるので、トンネルの全長を短くできること。陸上部のアプローチトンネルを短くできることや、土砂の掘削量を抑えられる利点もある。2つ目は、地盤に大きな支持力を必要としないため、比較的軟弱な海底にも設置できること。3つ目は沈埋函をドックなどで製作するため、水密性の高いトンネルを築造できることだ。

国内最長134mの沈埋函を7つ並べる

 海底トンネルは、1号函から7号函までの7つの沈埋函で構成する。19年7月に最後となる6号函の沈設が完了したことで、トンネルが貫通した。

(資料:国土交通省)
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 沈埋函1つ当たりの長さは134m、幅は27.8m、高さは8.35m。これまで国内で製作した沈埋函の中で最長となる。工区は6つに分かれ、6つのJV、延べ18社が工事に携わった。

 同規模の海底トンネルを沈埋工法で築く場合、通常は8~10年を要する。だが、工事を発注した国土交通省関東地方整備局は東京五輪までに開通させるため、約4年という短い工期を課した。

 工期短縮のため、沈埋函1つ当たりを長くして、沈埋函の数を当初設計の8つから7つに減らした。沈設する沈埋函ごとに転用して取り付けなければならないウインチタワーなどの施工の手間を省く。さらに、陸上部のアプローチトンネルの勾配を当初設計の3.2~3.6%から4%へとやや大きくすることで、アプローチトンネルの延長を短くした。

 「キーエレメント工法」も採用した。沈埋トンネル工法は、先に沈設した沈埋函と最後に沈設する沈埋函との間に一定の隙間を設けておく必要がある。沈設時の揺れで接合部の損傷などを防ぐためだ。従来は沈埋函とは別に、隙間を埋めるためのV字形のブロックを製作して、最終の接合部に後付けする必要があった。キーエレメント工法は、最後に据え付ける沈埋函自体を継ぎ手として使うことで、ブロックの製作と設置の手間をなくす。

キーエレメント工法を採用して、最後に沈設した6号函の内部。函体の側面がくさび形をしているのが特徴で、端部に設けた鋼製の仮隔壁が傾斜している(写真:大上 祐史)
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 沈埋函の製作方法も工夫した。まず、ドックで沈埋函の鋼殻を製作。次に、鋼殻を海上に浮かべて、鋼殻の内部にコンクリートを打設した。ドックを長期間、占有することなく複数の沈埋函を同時並行で製作できる。

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