昭和初期に建造されたモダンなコンクリート橋「山田橋」。架け替えに伴い解体されたが、保管しておいた部材の一部を生かした広場が2019年3月、鹿児島県姶良市に完成した。市内を流れる山田川を挟んで、旧山田橋の軸線上の3カ所に県が整備した芝生広場「やまだばし思い出テラス」だ(プロジェクトの概要は「昭和モダン橋が送る“第2の人生”」を参照)。前編では、広場整備に至るまでの住民参加のプロセスについてお届けする。
アーチが連続する造形に目を奪われた
鹿児島県姶良市を流れる山田川に、鉄筋コンクリート造の旧山田橋が建造されたのは、1929年。親柱や高欄が残る橋長50mを超える鉄筋コンクリート橋としては、鹿児島県内で最古だ。
九州大学キャンパスライフ・健康支援センターの羽野暁特任助教が、初めて旧山田橋を訪れたのは2014年のこと。目を奪われたのが、橋脚や高欄で連続するアーチの形状だ。当時、第一工業大学の講師として、大正から昭和初期にかけて造られたコンクリート橋を研究し、200余りの橋を見て回っていた。
「戦前の橋はアール・デコ調を取り入れて、四角や丸の開口部が繰り返すデザインが多かった。山田橋のようにアーチをくりぬいた形状が反復するデザインは見たことがなく、手づくりの造形に引かれた」(羽野特任助教)
だが、当時は既に、県による橋の架け替えに伴う旧橋撤去の方針が決まっていた。老朽化が進む旧橋は洪水時、橋脚に流木が堆積するなど治水上の課題を抱えていた。しかし橋を撤去すれば貴重な“地域遺産”が失われて、たちまち風景が一変してしまう。
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