現在の土木分野でAIブームをけん引するのは、機械学習の一種である深層学習(ディープラーニング)だ。深層学習では、脳神経のネットワーク構造を模した数理モデルであるニューラルネットワークをコンピューター上に幾層も構築。ここに大量のデータを入力すると、コンピューターがその特徴を自ら学び、未知のデータを分類できるようになる。

 事前に人が設定した特徴を基にコンピューターがデータを解析する機械学習との違いは、人が認識していない特徴にも気づける可能性があり、高精度で解析できる点だ。建設分野では、重機や作業員の動きを動画から解析して施工を効率化したり、構造物の損傷を写真から判定したりするのに使われている。

AIの代表的な解析方法とその例。機械学習の一種として深層学習や強化学習がある。取材を基に日経コンストラクションが作成
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 半面、深層学習を使ううえでは、AIが答えを導いた過程や着目した点が分かりにくくなる「ブラックボックス化」が課題だ。特に、生活に密接する土木インフラを扱う建設業界ではあだになるリスクもある。例えば、インフラの損傷の状態や将来の劣化を判断する「診断AI」は、技術者が理解できない答えを出す恐れがある。それを基に補修した構造物で事故が起こった場合、利用者への説明責任を果たせない。

 この課題を乗り越えるため土木研究所は、2018年9月から民間企業など25団体と共同で、AIを使った橋の点検や診断の効率化に取り組み始めた。画像解析技術を使った点検AIの他、深層学習を使わない診断AIの開発に挑戦している。1980~90年ごろに流行した「エキスパートシステム」と呼ぶ技術を使ってブラックボックス化を回避し、信頼性を確保する。

土木研究所が2018年9月から民間企業など25団体と共同で実施している「AIを活用した道路橋メンテナンスの効率化に関する共同研究」の全体像(資料:土木研究所)
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 現在、全国で道路橋の老朽化が深刻だ。国土交通省は2014年、全ての道路管理者に5年に1度の定期点検を義務付けた。技術者が不足する多くの自治体は1巡目の点検を何とか終わらせたものの、補修などの措置を取る間もなく19年度から2巡目の点検に取りかからざるを得ず、負担になっている。高齢化に伴って熟練技術者が減るなか、適切な診断ができているかどうかにも不安が残る。土木研究所は、3巡目となる24年度からの道路橋の点検に開発した技術の導入を目指す。

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