日経アーキテクチュア2019年10月24日号の特集は「開き・交わる学校建築」です。

(写真 左:安川 千秋、右:生田 将人)
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 特集の前書きを引用します。

 「教育空間における『開放』や『交流』の在り方が、より社会性を帯びたものに変わりつつある。『教育施設は重要な地域拠点』という認識も広まってきた。多様な存在を認め合う場所の実現には、建築的な仕掛けが鍵となる。学びの場にそうした現代的な性格を持たせた最新の事例を追う」

 「学校」というビルディングタイプについては、近年、毎年秋に本誌で特集を組み、これとは別に毎年春に本誌同梱の「別冊」をつくってお届けしています。ざっくり言って、年に10件程度は必ず取り上げているわけですが、取り上げる事例に困ることは全くありません。「少子化」という大きな社会構造の変化の中で、ニーズがどんどん変転しているビルディングタイプだということでしょう。

 社会的な要請が移り変わるということは、建築設計者のクリエイティビティーが発揮しやすい設計対象であるということです。

 試しに、日本建築学会賞作品賞で「学校建築(幼稚園、研究棟を含む)」が受賞した数を、戦後復興期と21世紀の今とで比較してみました。

〈1950~1960年代〉

  • 1958年(受賞年、以下同)/法政大学/大江宏(受賞者=設計者、以下同)
  • 1962年/名古屋大学豊田講堂/槇文彦
  • 1964年/南山大学/アントニン・レイモンド
  • 1967年/早稲田大学理学部校舎/安東勝男、松井源吾
  • 1968年/東京経済大学図書館・研究室/鬼頭梓

〈2000年代以降〉

  • 2001年/熊本県立農業大学校学生寮/藤森照信
  • 2002年/公立はこだて未来大学/山本理顕、木村俊彦
  • 2004年/福島県立郡山養護学校/渡部和生
  • 2008年/武蔵工業大学新建築学科棟♯4/岩崎堅一
  • 2008年/ふじようちえん/手塚貴晴+手塚由比
  • 2009年/神奈川工科大学KAIT工房/石上純也
  • 2011年/東京大学数物連携宇宙研究機構棟/大野秀敏
  • 2015年/木の構築 工学院大学弓道場・ボクシング場/福島加津也、冨永祥子
  • 2016年/流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館/赤松佳珠子、小嶋一浩
  • 2019年/桐朋学園大学調布キャンパス1号館/山梨知彦、向野聡彦

 1950~69年の20年間は5件、2000~19年の20年間は10件と、2倍になっています。毎年の総受賞数が同じではないとはいえ、「学校建築の受賞が増えた」と言っておかしくはないでしょう。

 比較の意味で、戦後復興期に建築の花形だった「庁舎」の受賞数を数えてみると、こんな感じに変化していました。

〈1950~1960年代〉

  • 1957年/倉吉市庁舎/丹下健三、岸田日出刀
  • 1959年/旭川市庁舎/佐藤武夫
  • 1959年/大多喜町役場/今井兼次
  • 1960年/羽島市庁舎/坂倉準三
  • 1962年/大分県庁舎/安田臣

〈2000年代以降〉

受賞なし

 学校建築が今、「建築的に新しい試みをしやすい領域」であることは、今回の特集の事例を見てもよく分かります。この中から今後の日本建築学会賞作品賞が選ばれる可能性も大いにありそうです。もちろん学校関係者にとって有用な実務情報となることを念頭に置いたものですが、学校に無縁であってもそんなミーハー心で読める面白い特集です。ぜひご一読ください。

[特集_目次]

開き・交わる学校建築
多様な出会いの空間で、地域拠点の役割果たす

(写真:諸石 信)
(写真:生田 将人 資料:C+Aの提供資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
出典:2019年10月24日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。