2019年9月26日号の特集は、「『挑戦の家』その後」。日経アーキテクチュアの“売り”の1つである検証企画の住宅編です。この10年間で話題になった「交流活性化型の住まい」5件のその後を追いました。

住戸の下に広がる半屋外の土間を入居者がリビングのように共同利用する「ヨコハマアパートメント」の竣工直後(左、2009年12月撮影、日経アーキテクチュア2010年1月25日号掲載)と、現在の様子(右)(写真:2点とも安川 千秋)
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 特集冒頭に並ぶ2枚の写真は、交流活性化型集合住宅の先駆けの1つ、「ヨコハマアパートメント」(2009年竣工、設計:オンデザインパートナーズ)です。左が竣工直後、右が現在の様子。今回の特集は、編集長である私の直轄企画で、実は10年前にこのヨコハマアパ-トメントを取材したときから、「いつか検証記事を書きたい」と思っていました。大げさにいえば10年間温めてきた企画です。

 特集の前書きと目次を引用します。

 「2020年代を前に、過去10年間に注目された住宅の使われ方を検証しよう──。そう考えたときに頭に浮かぶのは、『交流』や『共有(シェア)』の新たな形に挑んだものばかりだった。『ヨコハマアパートメント』や『シェア矢来町』は、プランの工夫により家族的な交流を生み出した第1世代だ。『つながり』『絆』といった言葉が世にあふれ出した頃、東日本大震災の仮設住宅でも交流が課題となった。震災後の設計では、『tetto』のように屋外を共有したり、『シェア金沢』のように多世代を混在させたりするなど、交流を長く持続させることへの試行錯誤が始まった。それら先駆的な住宅の“今”に学ぼう」

[特集_目次]

2009→2019 「挑戦の家」その後 
交流型プラン、10年の変化と進化

 ヨコハマアパートメントを最初に見たときの「目からうろこ」感は、私がこれまで取材した住宅の中でも5本の指に入ります。ただ、それが「宝石のように美しい」あるいは「これまでにない素材や工法を用いている」といったハード寄りの驚きではなく、「新しい交流の形」というソフト面の驚きだったので、見た瞬間から「時間を経たときにどうなっているのか(はっきり言えば、うまくいっているのか)」見てみたいと強く思いました。

(写真:安川 千秋)

 今回は、同様に「その後を見てみたい」と感じた交流活性化型の住宅を計5件、じっくり取材してもらいました(うち1件は私が取材執筆しました)。

 そして、5件の取材を通して見えてきた「持続的交流」実現のキーワードが下記です。

 このうち、取材チームが特に強く感じたのが、5番目の「『人』による変化」。この部分の説明を引用します。

 「『人』による変化を想定することを忘れてはいけない。『人』は、事業の継続性や交流の持続性に直結する。5事例に見られた変化や進化は、たどっていくと全て、『人の変化』に行き着く。賃貸住宅では当然、入居者が移り変わる。設計時のコンセプトにつながる強い思いを持ったオーナーも、いずれ代替わりする可能性がある。(中略)『人の変化』を想定しているかどうかは、住まいとしての魅力を維持・発展していけるかの成否を分ける重要な要因だ。そのことを、設計者は認識しておく必要がある」

 上記は特集の最後の部分からの引用ですが、ここを先に読んでから5事例を読むと、より教訓が頭に入りやすいのではないかと思い、引用しました。

 「交流」は人口縮小時代の建築設計者にとって重要なテーマの1つです。ぜひ本特集で今後のヒントをつかんでください。

出典:日経アーキテクチュア、2019年9月26日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。