日経アーキテクチュア2019年8月22日号の特集は、「レオパレス問題の波紋 問われる『監理』の在り方」です。

(背景の写真:小屋裏とアパート外観は那須弘樹、看板は内藤千照、図面はレオパレス21、会見は日経アーキテクチュア)
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 特集の前書きを引用します。

 「いまだ収束しない、レオパレス21の施工不備問題。被害に遭った物件は約2万棟に上る。同社は7月31日、是正改修工事の完了時期を当初予定から約1年延期すると発表した。同日、外部調査委員会が最終報告書を公表。ずさんな品質管理の実態が浮き彫りとなった。遅々として進まぬレオパレス21の対応に、住民やオーナーからは怒りの声が上がる。再発防止に向けて国は、工事監理制度や中間・完了検査制度の強化に乗り出した。社会の信頼を取り戻すため、建築界を挙げた抜本的な取り組みが求められる」

 今回の事件の経過を見てください。 

事件の経緯
2018年 3月29日、
4月17日
レオパレス21が2人のオーナーから、対象物件と確認申請図書との相違を指摘される
4月27日 レオパレス21が、同社施工のアパート(1994~95年に販売)において、小屋裏に界壁を施工していない不備があると公表
5月29日 レオパレス21が国土交通省で記者会見を開く。1996~2009年に販売したアパートで、「建築基準法に違反する疑いのあるものが発見された」とし、自社施工物件3万7853棟の全棟調査を発表
8月22日 岐阜県のアパート所有者が、建築基準法に違反する瑕疵が建物にあるとして、約2000万円の賠償を求めてレオパレス21を提訴
10月4日 レオパレス21が国交省に新たな不備の疑いがある旨を報告。国交省は同社に、事実確認や該当物件の特定などを指示した
2019年 2月7日 レオパレスは会見を開き、界壁不備問題の他に、界壁内部の充填材や外壁、天井部の施工仕上げでも新たな問題が発覚したと発表。1万棟以上の住民に転居を促し、大きな社会問題へと発展した。
2月20日 国交省が「共同住宅の建築時の品質管理のあり方に関する検討会」を設置
3月18日 レオパレス21の外部調査委員会が中間報告を発表
5月29日 レオパレス21の外部調査委員会が、調査報告を公表。同社はそれを受けて再発防止策を発表した。さらに、鉄骨造・準耐火建築物においても界壁で大臣認定に適合していない物件があると発表した。国交省は同社に、報告書に他社施工物件が含まれていないとして、他社施工物件も追加調査するように指示した
6月28日 国交省の外部有識者検討会が、中間とりまとめを公表。賃貸共同住宅版の工事監理ガイドラインなどの再発防止策を提言
7月12日 レオパレス21は、19年2月と5月に公表した施工不備について、消防法または火災予防条例の基準に不適合な恐れがあると発表
7月31日 レオパレス21は、全棟調査や改修工事の完了時期の延期を発表。同社は他社施工物件の追加調査も踏まえ、再発防止策などを国に報告した
8月2日 国交省の外部有識者検討会が、最終とりまとめを公表

 日経アーキテクチュアでは、界壁問題が明るみに出た初期の段階からこの件について報じてきました(「レオパレスのアパートに建基法違反の疑い、3万7853棟を全棟調査」2018年5月31日公開)。正直、当初はこれほど大ごとになるとは想像していませんでした。例えば「杭が支持地盤に達していない」と言われれば「それは大問題」とすぐに分かりますが、「界壁に不備がある」と言われてピンとくる人は、実際に集合住宅を設計している人以外には少なかったのではないでしょうか。

何度も謝罪会見を繰り返した
2019年5月29日に自社施工物件に関する報告書を公表した際の記者会見の模様。この際、創業家の深山英世社長(左から2番目の人物)が辞任、代表権のない取締役に降格する人事を明らかにした。問題を公表した18年からこうした謝罪会見を繰り返した(写真:日経アーキテクチュア)
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 しかし、その後次々に新たな不正が発覚し、謝罪会見が繰り返されるなかで、これは「当事者以外には発見しづらい」という「制度的な問題」をたださない限り解決しないと思い始めました。

 レオパレス21の創業社長が自らを「特級建築士」と名乗っていたというエピソードは確かに見出しにしやすいですが、我々がやるべきは1人のルール違反者を責め立てることではなく、「第二の自称『特級建築士』」を生まないことです。

 今回の特集では、そうした視点から、不正が見逃された背景に加え、今後の工事監理面への影響を考察してみました。

[特集_目次]

 工事監理だけでなく、中間検査の仕組みにも見直しが必要でしょう。もちろんチェックの手間が増えるということは、それぞれの報酬についても見直す必要があります。責任と報酬は常にセットで考えなければなりません。

 「一部の悪人のためになぜ真面目な我々が……」と思う気持ちは分かりますが、これを工事監理や検査の報酬を上げるチャンスに変えることもできるのではないでしょうか。その後押しとなるように、日経アーキテクチュアは今後もこの問題を追っていきます。

出典:日経アーキテクチュア、2019年8月22日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。