就職氷河期に社会に出始めた、いわゆるロストジェネレーション(ロスジェネ)が、建築界をけん引し始めています。日経アーキテクチュア2019年7月11日号の特集では、ロスジェネを中心に、最近の活躍が目覚ましい9人をピックアップして紹介しました。タイトルは「ポスト平成の旗手たち(前編) 『デザイン』を問い直すロスジェネ以降の9人」です。

(右上の写真:SEN その他の写真・資料は各記事中に記載)
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 まずは9人の顔ぶれを。

[特集_目次]

 特集を担当したデスク(新人類世代)による“世代分析”を引用します。

 「(彼らの取り組みの)共通項として浮かぶ1つが、地方都市のまちづくりだ。人口減少、中心市街地の空洞化など、課題は山積。いかに人を呼び戻し、にぎわいを生むか、建築単体にとどまらない仕組みづくりが求められている。

 もう1つが、どんな建築をつくればいいのか。市場を掘り起こすことだ」

 こういう若手主体の企画をやると、取り上げられた当事者からは「世代でひとまとめにしないで」とよく言われます。自分自身も20代のころには「育った環境も違うし、生まれ年でくくられても……」とよく思ったものです。一方で、上の世代からは、「実績の少ない若手を持ち上げるのは若手読者のためか」といったお叱りもいただきます。

 それでも時折、若手に注目した企画をやるのはどうしてか。正直に言うと、若手に読んでほしいというのは理由の半分にすぎません。もう半分は、上の世代へのメッセージです。

 自分が年をとって分かってきたのは、「自分の世代の特色は、自分より下の世代が活躍するようになって分かる」ということです。言い換えると、下の世代がどう注目されるのかによって、自分たち世代に「欠けているもの」が見えてきます。今回の特集も、目的の半分は、バブル世代やさらに上の世代に、「なるほどそういう視点があったか」と発奮してもらうためです。

 バブル世代ど真ん中の私が特に感心したのは、ヤマガタデザイン代表取締役の山中大介氏。昨年、山形県鶴岡市に坂茂氏の設計によるホテル「SHONAI HOTEL SUIDEN TERASSE(スイデンテラス)」をオープンさせました。

スイデンテラスを背景に立つ山中大介氏。この角度から見たときのホテルが一番美しいため、手前の水田に建物をつくる計画は取り止めた(写真:長井 美暁)
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 これは私も実物を見に行きました。「水田の中のホテル」というと、中国の山水画のような宿泊施設をイメージするかもしれませんが、敷地は四角いビルがぽつぽつと立つサイエンスパークの一画。そこに水田の風景を生かした木造のホテルをつくったのです。バブル世代であれば、周囲から隔絶した“別世界”をつくりそうなところですが、このスイデンテラスは、なんとも言えない“周囲との共存感”が新鮮でした。

スイデンテラス。設計は坂茂氏(写真:長井 美暁)
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スイデンテラスの夕景(写真:長井 美暁)
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 特集の記事にはこう書かれています。「山中氏はヤマガタデザインで、地域課題をデザインし、それによって持続・自走する地域を実現することを目指している」。なるほど、「持続・自走する地域」は「別世界」をつくることでは生まれません。そういう視点を持つクライアントが今後はホテルに限らず、建築の在り方を変えていくのではないかと感じました。

 ほかの8人の記事にも、それぞれ今後の参考になるヒントがあります。ぜひお読みください。次号の後編もお楽しみに。

 そして現在、この前後編特集のスピンオフ企画とも言える「建築を変える注目株 令和の旗手たち」を当サイトで連載中です。こちらものぞいてみてください。

出典:日経アーキテクチュア、2019年7月11日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。