「長田直之さん(建築家、ICU代表)が去年の夏に中国で取ったプロジェクト、もうかなり建ち上がっているらしいよ。しかも5万m2」「え、半年ちょっとで? うそでしょ?」

 そんな編集部での雑談がなかったら、今回の特集は実現していなかったかもしれません。

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 2019年5月23日号の特集は、「いざアジア 失敗しない踏み出し方」です。特集の前書きを引用します。

「少子高齢化や新築需要の減少が進む日本。新たな収益源の確保は建設業界にとって死活問題だ。それでも外に目を向ければ、建設市場規模が拡大するアジアマーケットが広がる。前号の特集では勢いのある都市を現地からリポートした。今号は、これから一歩を踏み出す設計者を後押しすべく、現在進行中の案件で『契約』『営業』『人・体制』に焦点を絞り、成功の秘訣を探る」

 前号の特集「インド、中国 都市開発の野心」では、人口数で世界のトップ2を占める中国とインドの大胆な都市開発の現状をリポートしました。今回は両国を含む「アジア諸国への踏み出し方」のノウハウ編です。

目次

 冒頭の雑談の事例は、特集の前半で紹介しています。長田直之・ICU代表に取材してみると、話は本当でした。しかも「かなり建ち上がっている」程度の話ではなく、すでに上棟していました。

 長田氏は1968年生まれ。安藤忠雄建築研究所を経て、94年にICUを設立。住宅を中心に設計活動を行っています。中国・武漢のプロジェクトは、長田氏にとって初めて海外で実現するプロジェクトで、規模も最大だそうです。しかも発注者は中国の巨大企業。スマートフォンの世界シェア4位、小米(シャオミ)の新本社ビル!

 そんな絵空事のようなプロジェクトを昨夏から進めているにもかかわらず、東京の事務所内は1年前と全く雰囲気が変わらずで、長田氏も何事もないように淡々としているのが印象的でした。相手が海外の巨大であろうと、気負わず、焦り過ぎず。めまぐるしいスピード感の中でも自分らしさを貫く──。そんな長田氏の姿勢が、今号の特集の方向付けに大きな影響を与えました。

 特集の冒頭に掲載した分析表は、長田氏をはじめ、今回取材した5組の取り組みを、「受注の経緯」「契約」「設計料規定」「確認申請、法的対処」「体制」「今後の展開」の6つの観点で整理したものです。タイトルにある「失敗しないための踏み出し方」が凝縮されています。

 そして、この特集のラストの部分には、私の個人的関心で企画した「海外から見た日本ブランド 日本人建築家の優位性って何?」というコメント集を掲載しています。

 このコメント集は、現在、当サイトで連載中の「『プリツカー賞』常連日本 海外からはどう見える?」の抜粋版です。ぜひロングバージョンのウェブ連載(こちら)もお読みください。

出典:日経アーキテクチュア、2019年5月23日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。