2019年3月28日号の特集は、「収益アップ!集合住宅大作戦~地域へのにぎわい貢献が事業採算性を向上」です。

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 特集のタイトルを見て、「いつもの日経アーキテクチュアっぽくない」と思った方もいるかもしれません。私も「テレビのドキュメント番組(例えばテレビ東京)みたい!」と思いました。でも、実際、取り上げている事例がドキュメント番組のように分かりやすい「なるほど感」に満ちていたので、そういうノリで読んでもらおうと思い、OKを出しました。

 今回の特集のポイントは「地域へのにぎわい貢献」と「事業採算性」です。

 特集の前書きを引用します。

 「設計者ならではの視点で収益性向上の工夫を盛り込んだ賃貸集合住宅を集めた。 地元で人気のベーカリーをテナントに入れて交流拠点化を図ったり、 築古アパートを全住戸『商いスペース付き』に改修したりといった取り組みだ。 地域へのにぎわい貢献が結果的に事業採算向上のカギとなる」

目次

 どの事例にも収益向上のヒントがありますが、筆者が「そんな方法があったか」と特に感心したのが、「欅(けやき)の音terrace」(東京都練馬区、設計:つばめ舎建築設計、スタジオ伝伝)です。

 築年数を重ねて競争力が落ちてきた鉄骨造アパートを全戸「商いスペース付き」に改修して差別化を図ったものです。建て替えではなく改修を選択することでイニシャルコストを抑え、10年程度の短期回収も見込んでいます。

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〔写真3〕ショーウインドーの競演
2階住戸は北側の廊下に面して大小の出窓開口を新たに設けた。入居者が作品や商品のディスプレーとして活用している。左は2階廊下の見通し、右は室内から見たところ(写真:浅田 美浩)

 詳しくは記事を読んでほしいのですが、ざっくり言うと、住戸の共用廊下側の窓をディスプレーにして、訪問者と交流しやすくしているのです。それが1戸だけだと単なる趣味で終わりそうですが、複数戸が集まることで回遊性が生まれます。

 さらにこの集合住宅では、1階の屋外に共用のデッキテラスを設けて、マルシェなどのイベントを開けるようにしています。

 改修設計を担当したつばめ舎建築設計のスタッフは、完成後も毎週末、現地に通って、DIYによる室内改装や開業関連の相談にのるほか、入居者同士の食事会や近隣住民に開放するイベントなども主催しているそうです。そうした「ファシリティマネジメント」のノウハウは、この事務所の強みとなっていくに違いありません。

 「地域ににぎわいを創出する」というテーマは、集合住宅では古くからある定番テーマです。けれども、建築界では、それを「収益性」につなげて語ることはあまりなかったように思います。「収益アップ!集合住宅大作戦」というタイトルに違和感を抱いた方ほど、今回の特集で得るものは多いかもしれません。ぜひ読んでみてください。

出典:日経アーキテクチュア、2019年3月28日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。