今回はまず、このグラフから見てください。自分で特集を企画しておいて何ですが、「え、そんなに多いの?」とびっくりしました。

共同住宅で紛争になった不具合事象。「遮音不良」や「異常音」など、音を原因とした不具合による紛争が目立っている(資料:住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報2018」)
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 共同住宅で紛争になった不具合事象の割合を比較したものです。「ひび割れ」が18.8%でトップですが、「遮音不良」が15.2%、「異常音」が9.4%と、音を原因とした不具合はひび割れに匹敵します。

 2019年3月14日号の特集は、「過敏になる音問題~トラブルに学ぶ『多様化する受音者』への配慮」です。

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 私事で恐縮ですが、騒音トラブルの加害者になったことがあります。すでに成人したうちの子どもがまだヨチヨチ歩きだったころのこと。当時、鉄筋コンクリート造の賃貸マンションの2階に住んでいた筆者は、下階の住人から「音がうるさい」とすごい剣幕(けんまく)で怒られたことがあります。平日の夜10時過ぎ、子どもと遊んでいたとき、ピンポンとチャイムが鳴り、玄関のドアを開けると下階の住人が鬼の形相で立っていました。それまでその住人とは会ったことがなく、あっけに取られてひたすら謝るしかありませんでした。

 筆者は当時、午後10時に家に帰れるのがまれで、たまに子どもが起きている時間に帰れたときには(父親の顔を忘れさせまいと)子どもと遊んでいました。大きな音を出しているという自覚は全くありませんでした。けれども、下階の住人は、ちょうどそのころに寝て、朝早く起きなければならない仕事だったらしく、ドスドスという子どもの足音に我慢がならかったようです。

 下階の住人がそんな生活とは想像しておらず、大変申し訳ないことをしたと反省しました。ただ、本当に、下階に響くほどの音だとは思っていなかったのです。

 人の生活サイクルは違うものです。音の感じ方も違います。さらには文化の異なる外国人との接点も増えています。「『想定外』の教訓」という新シリーズを始めるに当たり、初回を「音問題」にしようという方針はすんなり決まりました。

 特集の前書きを引用します。

 「建築では音を巡るトラブルが後を絶たない。工夫して設計したつもりでも、受音者の感じ方によっては騒音が生じていると捉えられることがある。多様化する受音者の耳に配慮した防音設計は、どうすれば実現できるのか。シリーズ「『想定外』の教訓」の第1回は、音のトラブル事例から、見落としがちな設計・施工のポイントを学ぶと共に、音問題の背景を探る」

目次

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 特集では全部で15の「トラブルの教訓」を紹介しています。「あるある」から「そんなことが!?」まで、設計のヒントが満載です。ぜひお読みください。

出典:日経アーキテクチュア、2019年3月14日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。