「調査」の価値にはいくつかあって、全く何もないところからすべてを調べ上げた「ゼロから調査」にはもちろん大きな価値があると思いますが、断片的に調べられていたものを統合・分析する「まとめ調査」にも、それに引けをとらない価値があると思います。日経アーキテクチュア2018年10月25日号の特集「『倒壊危険建物』全国緊急調査」は、後者の調査企画です。

 特集の前書きを引用します。

 「自治体に一定規模以上の旧耐震建築物の耐震診断結果の公表を義務化した改正耐震改修促進法が2013年11月に施行されて5年。18年10月に和歌山県が公表したことで、全国の結果がほぼ出そろった。日経アーキテクチュアが独自に集計したところ、震度6強で倒壊の危険性がある大型ビルの約4割で今後の対応が『未定』であることが判明した。首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの巨大地震の発生が切迫するなか、命に関わる建築の地震対策はどう進めていくべきなのか。現在進行中の耐震改修事例などを通じ、解決策を探る」

 この調査は、13年の改正耐震改修促進法施行により各自治体が実施・公表を義務付けられていたもので、調査を終えた自治体が順次公表していました。今年5月、国土交通省が途中経過として「全国約1万600棟のうち約16%が、震度6以上に地震で倒壊する恐れがある」と公表しましたが、公表したのは全体の棟数だけで、地域別や用途別の棟数は明らかになっていませんでした。そして、この時点では和歌山県が「風評被害が懸念される」として診断結果を伏せていました(詳細は「全国1700棟が震度6強で倒壊の恐れ」)。

 編集部では以前から、この調査は全国の状況を比較分析してこそ意味があると考えていました。そうしたところに、今年6月に大阪北部地震、9月に北海道胆振東部地震があり、さらに10月には和歌山県が結果を公表したことから、全自治体の結果を編集部で調べてとりまとめることにしました。

 今回の緊急調査特集の売り物は、地域別比較と用途別比較、そして危険度が高い約1000棟のエリア別実名リストです。調査過程で拾った2つの有名商業施設の耐震改修計画のリポートもあります。ぜひ記事をご覧ください。

<特集1目次>
「倒壊危険建物」全国緊急調査