今号は、近年関心の高まっている木造の特集です。正直に言うと、海外では10階建てを超える高層木造建築がバンバン建ち上がっているなか、4階建てでもニュースになる日本の木造建築が、ずいぶん遅れをとっている気がしていました。そんな気がしているのは、おそらく私だけではないでしょう。ですが、そんな人にこそ読んでほしいのが今号(2018年10月11日号)の特集「木造第3世代」です。

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 最初に断わっておきますが、高層化の話ではありません。特集の前書きを引用します。

 「1990年代に大型木造ドームが相次ぎ誕生し、大規模木造時代の幕が開けた。それを第1世代とするならば、第2世代の契機は2010年、公共建築物等木材利用促進法の施行だ。それにより、大型耐火建築が実現するなど一気に花が開いた。次なる第3世代は、耐火要件を避けた中規模で、地域のシンボルになる架構のデザインを競う。流通材で20m超のスパンを実現、伝統的な貫(ぬき)構造を集成材で進化させるなど、手法は様々だ」

 前書きを読んで分かっていただけたかと思いますが、この特集で「第3世代」と呼んでいるのは、伝統木造に対する「現代木造」の2度目の飛躍期、という意味です。耐火木材が可能にした大型木造建築を第2世代と位置付け、その次の動き(第3世代)を追いました。

1990年以降、大型ドーム建築など大規模木造が誕生(A)。2010年の公共建築物等木材利用促進法の施行後は、大型の耐火建築も実現した(B)。最近は中規模で意匠性の高い建築が増えている(C)。本誌ではA~Cをそれぞれ、木造建築の第1世代、第2世代、第3世代と位置付けた(資料:稲山正弘氏へのインタビューなどを基に日経アーキテクチュアが作成)
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 今回の特集では、あえて施設規模を耐火のハードルが低い「中規模低層」に抑え、手に入りやすい製材や、自由度の高い集成材を用いて架構の美しさにこだわったプロジェクトを紹介しています。

<特集目次>

Part1 製材を生かす/流通材にひと工夫加えて意外性

構造設計者の視点1 山田憲明氏(山田憲明構造設計事務所代表)

Part2 集成材を使いこなす/見せる架構で地域のシンボルに

話題 広がるCLTの活用

構造設計者の視点2 稲山正弘氏(東京大学大学院農学生命科学研究科教授、ホルツストラ主宰)

 冒頭に「高層化の話ではありません」と書きましたが、1件だけ、高層化の取り組みを「話題」として紹介しています。「広がるCLTの活用 仙台市泉区高森2丁目プロジェクト」です。

 この記事は、特集の助っ人として私が書きました。そのこぼれ話を「建築日和」でイラストに描きましたので、ここにも載せておきます。

(イラスト:宮沢 洋)
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 日本で木造の高層化がなかなか進まないのは、地震対策に加えて、耐火の要件が厳しいことがあります。欧州の高層木造には、日本でいう「燃えしろ設計」(木材が炭化する間に避難の時間を稼ぐ)の考え方で設計されているものが多いのですが、日本では4階以上の木造建築には「燃えしろ設計」が認められず、耐火構造が求められます。これを「火災時の対策が厳しすぎてガラパゴス化している」と批判する声もありますが、今回の特集を見ると、中規模低層においては「世界に胸を張れる木造」に進化しているといえそうです。

 やがて日本でも高層、超高層の木造技術が確立したとき、今、中規模低層で培いつつあるデザイン力が生かされることは間違いないでしょう。今は、世界に再び「日本=木造先進国」とアピールするための助走期間なのかもしれません。

出典:日経アーキテクチュア、2018年10月11日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。