「たられば」という言葉は、「現状よりももっと良くなっていたかもしれない」という仮定で使うことが多い言葉ですが、今の経済状況を見て、「もし2020年の東京五輪が誘致できていなかったら……」と考えることがよくあります。今号(2018年9月13日号)の特集「経営動向調査2018 堅調維持しつつも伸びに“一服感”」を読んで、またそれを考えてしまいました。

 2017年度単体決算を対象にした本誌調査では、設計事務所、建設会社とも堅調を維持しました。

 設計事務所の設計・監理業務売上高は、有効回答のあった86社のうち「増えた」が66.3%、「減った」が31.4%。全体の対前年度平均増減率は2.4%増でした。建設会社の建築売上高は63社のうち「増えた」が58.7%、「減った」が41.3%で、全体の対前年度平均増減率は2.6%増でした。

 人口は減少しており、公共施設や住宅は余りつつある。そうしたなかでの好業績のけん引役は「宿泊施設」です。

用途別の設計・監理業務売上高を回答した設計事務所の17年度と16年度それぞれの売上高合計額を比較した増減率。宿泊施設が突出して高く、次いで文化施設が目立つ
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 設計事務所の設計・監理業務売上高について用途別に対前年度増減率を計算してみると、宿泊施設の伸びが49.3%と突出していました。16年度実績を対象にした前回調査でも37.2%という大きな伸びでしたが、それを12.1ポイント上回っています。前回調査では宿泊施設に次いで商業施設が対前年度23%と大きな伸びを示していましたが、こちらは今回調査では対前年度マイナス1.1%と減速しています。

 宿泊施設の伸びは、五輪に向けて海外からの観光客やビジネス客が増えていることが大きな要因です。ただ、そろそろホテルの供給過剰を危惧する声も聞かれ始めました。では、五輪後に何を狙うのか。そのあたりの各社の戦略は特集をお読みください。

経営動向調査2018 堅調維持しつつも伸びに“一服感”

 オリンピックの期間は2020年7月24日~8月9日、パラリンピックは8月25日~9月6日。間の期間を含めても1カ月ちょっとのイベントです。おそらく既存施設を使ってイベントを開催するだけなら、数年で準備できるでしょう。今回の場合、2013年9月の招致決定から「約7年後に開催」という目標達成期間の「長さ」が様々な経済波及効果を生んだものと思います。

 だとすると、五輪の先の大きな目標が欲しくなります。2025年の開催地に立候補している大阪・関西万博は、今年11月23日にBIE(博覧会国際事務局)総会で結果が決まります。これが決まると、やはり招致決定から「7年後」という格好の目標になるのですが、結果はどうなることでしょうか。

 単なる夢想ですが、もし大阪・関西万博が招致できなかった場合、その代わりに「都市の最先端」を披露する国際博覧会を開催してはどうでしょう。

 かつて東京都が「世界都市博覧会」というイベントを1996年に臨海副都心で開催しようとしましたが、反対の声が高まり、とん挫しました。ああいった「埋め立て地開発のきっかけ」のための博覧会ではなく、災害に強い都市づくりの手法、縮小時代の都市の在り方を、過去の被災地域の復興を通して世界に問う博覧会ならば、やる意味があるのではないかと思います。それを「世界巡回型」の都市博覧会にして、日本が幹事役となって開催地を割り振ることにしてはどうかと……。

 冒頭がネガティブな「たられば」で始まったので、最後はポジティブな「たられば」で締めてみました。長い余談で大変失礼しました。

 なお、この号での掲載は間に合いませんでしたが、台風21号による被害、北海道胆振東部地震による被害については、速報記事をそれぞれ下記のページにて一覧できます。次号(9月27日号)まで待てないという方はそちらをご覧ください。

2018年台風21号

北海道地震

出典:日経アーキテクチュア、2018年9月13日号
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