あまりの暑さに、仕事に気合いが入らない──。そんな人が多いのではないでしょうか。正直、私もその1人です。こんなときには、何日か休みを取って旅に出ることをお薦めします。暑くても旅は活力を与えてくれます。建築巡りならば、少なくとも室内は冷房が効いていることでしょう。

 一体、何の話かというと、今号の特集のタイトルは「技術観光(テクノツーリズム) ~名建築が証す日本のテクノロジー」。夏休みに行ってみてほしい(できれば家族や彼女と行ってほしい)名建築ガイドです。

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 特集の前書きを引用します。

 「観光立国の切り札として『技術』に注目が集まっている。工業をはじめ日本の産業を支えてきた技術そのものが、国内外の人を引き付けるコンテンツとなり始めた。それを引き出すのも建築界の役割だ。技術を駆使して実現した現代建築や科学施設、産業施設を訪ね、地域づくりの一手段となる『技術観光=テクノツーリズム』の普及・定着に向けてヒントを探った」

 特集冒頭の「梅田スカイビル」の記事は、私が書きました。「編集長も記事を書くのか」と驚かれることもありますが、何しろ筋金入りの“建築好き”ですから、書きたいと思った記事はほかの人には任せられません。梅田スカイビルは、私が入社3年目の1992年に日経アーキテクチュアの表紙を飾った施工中の航空写真(下の写真)が印象的で、いつかこの建物の施工プロセスについて改めて書きたいと思っていました。その夢が四半世紀たってかないました。

施工後半、山場となる空中展望台のリフトアップを終えた梅田スカイビル。1992年5月下旬撮影。JR大阪駅の北側、梅田貨物駅に隣接した約4.1ヘクタールに開発した「新梅田シティ」の核となるツインタワー。93年7月に開業し、今年7月2日に開業25周年を迎えた(写真:三島 叡)
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 その梅田スカイビルですが、開業25周年となるこの7月、2棟の超高層ビルをつなぐ空中庭園展望台をリニューアルオープンしました。改修方針は、建設時の「技術」を前面に打ち出すこと。かつて開口部近くに並んでいたアベックシートを撤去し、シンプルな白い空間としました。代わりに、空中展望台を吊り上げる「リフトアップ工法」のアニメーションを見るコーナーや、構造や施工などを詳しく展示する部屋を新設しています。

A:40階のシティ・ビュー。開口部近くに並んでいたアベックシートを撤去し、すっきりした空間に改修(写真:日経アーキテクチュア)
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B:40階の大型モニターに投影されるアニメーション「空へ」の1シーン(写真:日経アーキテクチュア)
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C:ビルの構造や施工について紹介する部屋。プロポーザル時(1988年)のプレゼン動画は必見(写真:日経アーキテクチュア)
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 リニューアルというと、入場者が減ってきて「巻き返し」を図るのかと思われそうですが、その逆です。入場者が増えすぎてこれ以上、キャパシティを増やすのは難しいので、入場料を従来の1000円から1500円に上げ、「現状の人数のまま売り上げを増やす」という狙いの改修です。

入場者数が上昇に転じた理由としては、2008年に「世界の建築トップ20」に選ばれたほか、11年にJR大阪駅ビル、13年にグランフロント大阪が開業し、大阪駅北側への人の流れが増えたことがある。06年以前の外国人入場者数はデータなし(資料:積水ハウス梅田オペレーション)
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 そのための新たな価値の中心に「技術」を据えたわけです。展望台の運営や広報を担当する積水ハウス梅田オペレーションの高瀬奈々氏は、「訪れる外国の人から、『このビルはどうやってつくったのか』と聞かれることが多く、それこそが施設の売り物になる考えた」と説明します。「売り物になる」と踏んだ技術の具体的な特徴については、特集をご覧ください。

技術観光(テクノツーリズム) ~名建築が証す日本のテクノロジー

1 現代建築編/新発想の架構が集客の核に

2 科学施設編/今なお原点を伝える研究拠点

3 産業施設編/近代化の足跡が地域のシンボルに

展望

 そして、この号の「建築日和」では、梅田スカイビルの設計の中心になった原広司氏へのインタビューの余話をイラストにしました。こちらにも同じものを載せておきます。

(イラスト:宮沢 洋)
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