2020年7月24日の東京オリンピック・パラリンピック開会式まで2年を切りました。なんでも五輪に結び付けるなと言われそうですが、東京オリンピック・パラリンピックの開催準備をきっかけに、公共施設や商業施設のバリアフリー対策が加速していることをご存じでしょうか。今号(2018年7月26日号)の日経アーキテクチュアは、そうした動きを受けて、特集「バリアフル建築、利用者の警告」を掲載しました。

 特集の前書きを引用します。

 「2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催まで、あと2年。移動、観戦、宿泊などに関するバリアフリー関連の基準などを見直す動きが活発だ。障害は個人ではなく、社会、環境の側にある、という考え方にシフトしてきた。車椅子使用者、外国人、LGBT……。目指すべきは誰もがストレスを感じずに参加できる社会だ。しかし、特別なニーズへの個別解は、そのほかの人たちのバリアに転じることもある。建築や都市のバリアを解消し、全体的なユニバーサルデザイン化を図るには、設計者の観察力と計画力が欠かせない」

 バリア(障壁)というのは、つくり手側に自覚がなくても生まれるものです。この特集を読んで、そうだったのか!と思うことも多々あるでしょう。この特集では、国際基準の導入によってハードルが高まっている“次世代バリアフリー対策”と、意識向上の一方でなかなか撲滅できない“定番NG”の両方を取り上げています。

 ここでは後者の定番NGのいくつかを紹介します。何がまずいのかを一緒に考えてください。

 まずは、この写真。多機能トイレ内のある設備が機能を果たさない状態になっています。

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 答えは、「背もたれが使えない状態になっている」です。

体幹が弱い人や排せつに時間を要する人などは、背もたれがあると座位を保ちやすい。写真の事例では、便器が蓋付きのため、せっかく取り付けた背もたれが使えない
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 続いて、この写真。これも車椅子利用者のためのある設備が設置はされているのですが、ほとんど役に立たない状態です。

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 答えは、「L型手すりが遠過ぎて手が届かない」です。

L型手すりの設置位置が遠過ぎるので、立ち上がる際の補助に使えない。さらに、左側にある跳ね上げ式手すりも高過ぎるので、力が入れにくい
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 これらは特集内の「定番NG集 “無自覚バリア”に物申す!」で取り上げた事例のほんの一部です。

 こうしたバリアは健常者には気付きにくいものです。それらを1つずつ潰していくためには、設計段階で実際の利用者に話を聞いたり、施工後に実際に使ってみてもらって調整することが確実です。特集内の「ルール超えた使いやすさ追求」では、バリアフリー改修を実施したあるホテルでの利用者検証のプロセスをリポートしています。

 今回の特集は、身体的弱者にとってのバリアの話だけではありません。パート2では「軽視されてきた生活習慣のバリア」というテーマで、外国人や分煙、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)への対応の課題を取り上げています。

 “無自覚バリア”を設計段階で完全になくすことは難しいかもしれませんが、それぞれの利用者の立場を想像すれば、バリアの種を減らすことはできます。そういう意味ではどの記事も発見が多いと思いますので、ぜひご覧ください。

出典:日経アーキテクチュア、2018年7月26日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。