Bluetooth対応のワイヤレスイヤホンの市場が拡大している。中でも完全ワイヤレスイヤホン(TWS:True Wireless Stereo)の伸びが堅調で「最近は、金額ベースでワイヤレスイヤホンの5割近くがTWS」(市場調査関係者)だという。完全ワイヤレスイヤホンとは、左右のイヤホンがケーブルでつながっておらず、完全に独立したタイプのワイヤレスイヤホンのことだ。

 右肩上がりの市場だけに新しい技術も登場している。筆者が注目するのは、米クアルコム(Qualcomm)が開発した完全ワイヤレスイヤホンの新技術「TWS Plus」だ。これを採用した「Mavin Air-X」(2018年11月発売)というワイヤレスイヤホン製品も登場している。これらを2回にわたって取り上げる。今回は主にクアルコムの新技術について、次回は「Mavin Air-X」の紹介に加え、人気機種である米アップル(Apple)のAirPodsの技術的な秘密にも迫ってみたい。

2016年12月に発売されたAirPodsだが、2年を過ぎた今でも、完全ワイヤレスイヤホン市場で独走体制を維持している(筆者撮影)
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AirPodsが火を着けた完全ワイヤレスイヤホン市場

 TWSの先駆けとなったのは、2015年末に登場した「EARIN」だった。筆者は、その存在が気になりながらも、どこかキワモノ的な印象が先行し手を出せないでいた。だが、2016年末に登場したAirPodsを使い始めてからというもの、TWSの利便性に打ちのめされてしまった。

 その模様は約2年前のコラムでお伝えした。今読み返すと興奮気味な書きっぷりに赤面してしまうのだが、それだけAirPodsの完成度の高さに感激したということであろう。

 2017年になると、AirPodsが火を着けたTWS市場にソニー、米ボーズ(BOSE)、デンマークのバング&オルフセン(Bang&Olufsen)といった有名オーディオメーカーも参入して認知度も高まり、Bluetoothイヤホンとして市民権を得た印象だ。今では、5000円台から3万円オーバーまで機能・性能や通信方式の違いで選択肢の幅が大きく広がっている。

 ただ、多くのTWS製品が登場したとはいえAirPodsの優位は揺るがなく、前出の関係者は「金額ベースで約4割のシェアを持っているのではないか」と見積る。確かに電車内や街中で耳から白い棒をニョキッと垂らしている人を見かけることが多くなった。

クアルコムが世に問う完全ワイヤレスイヤホンの新技術

 そのようなAirPods優位の状況にライバルも手をこまねいているわけではない。追い付き追い越せとばかりに、機能や性能の向上に取り組んでいる。その中で筆者が注目するのは、冒頭に挙げたTWS Plusである。

 TWS Plusの最大の特徴は、クアルコム製の最新チップとの組み合わせにより(1)音切れの軽減、(2)バッテリーのロングライフ、(3)低遅延──を実現している点にある。それを可能するために、スマートフォン(スマホ)とTWSの接続方法に手を加えている。図に示すように、従来のTWSは、スマホとのBluetooth接続は左右どちらか一方のイヤホンに限定し、そのイヤホンを親機としてもう一方のイヤホンに音を飛ばしている。

従来(左)は、スマホと接続するのはどちらか一方だった。TWS Plus(右)は、左右のイヤホンがそれぞれスマホと接続する。
(出所:クアルコム)
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 TWS Plusでは、左右それぞれのイヤホンが個別にスマホとBluetooth接続している。これにより前述の(1)〜(3)を実現している。それぞれについて性能向上の理由を見ていこう。