米アップル(Apple)はiTunesの段階的廃止を計画している──。

 アップルがサブスクリプション型のストリーミングサービス「Apple Music」を開始した当初からこのような噂がサイバー空間を飛び交い、海外のネットメディアがたびたび記事として取り上げてきた。

Apple Musicの開始以降、ダウンロード型サービスであるiTunes廃止の噂は絶えない(筆者撮影)
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 Apple Music立ち上げの立役者である音楽プロデューサー、ジミー・アイヴィン氏の「人々はいつか(ダウンロード)購入をやめるだろうね」というコメントを拡大解釈する形で、今にも終わるのではないかと思わせるあおったタイトルの記事もある。音楽制作業を営む筆者は、そのような記事を目にするたびにやきもきしながら、苦手な英語と格闘しつつ文章の行間に目を凝らし、その背景に存在する隠れた真実を探り出そうを躍起になっていた。

 アップルはこの件について正式にコメントしていないので、すべては予測と推測の彼方に揺らめく蜃気楼のような「可能性」でしかないのだが、iTunesのダウンロード販売からそれなりの売り上げを得ている筆者としては、この「いつか」は直面せざるを得ない現実として目を背けるわけにはいかない。

右肩上がりのストリーミング、有料ダウンロードは物理メディアより下に

 米国でサブスクリプション型のストリーミングサービスの売り上げが右肩上がりで伸びている報を目の当たりにすれば、iTunesの段階廃止という噂に「真実味」というスパイスが加わる。全米レコード協会が3月に公開した2017年の売り上げのサマリー(http://www.riaa.com/wp-content/uploads/2018/03/RIAA-Year-End-2017-News-and-Notes.pdf)によると、ストリーミングサービスの売上高は音楽産業全体の65%を占め、前年比43%の伸びを達成している。音楽産業全体の売上高も前年比で16.5%増を記録し、ストリーミングサービスの興隆が全体の売上増をけん引したと分析している。

2017年、ストリーミングの売上高は音楽産業全体の65%を占めた。ちなみに「シンクロ」というのは、映画やテレビのBGMなどでの利用を示す(全米レコード協会のデータから筆者作成)
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 その一方で、有料ダウンロードの売り上げは前年比24.7%の落ち込みで、全体に占める割合は15%と低迷。驚いたことに、CDなどの物理メディアの17%より低い結果となった。一時は物理メディアの売り上げを凌駕した有料ダウンロードだが、ストリーミングサービスに食われた格好だ。

 有料ダウンロードにおける米国でのiTunesの市場シェアは7割だったときもあるだけに、業界全体の有料ダウンロードの落ち込みはそのままiTunesの売り上げ減に直結しているのではないのか。アップルは決算においてiTunes単独の売上高を公表していないので想像するしかないのだが…。