半年前の2017年9月、iOSがバージョン11で拡張現実(AR)に対応した瞬間、iPhoneとiPadは世界最大規模のARプラットフォームとしての地位を確立した。アップルが正式な出荷台数を公表していないため、プラットフォームとしての正確な数字を知ることはできないが、iOS 11以上にアップグレードしたiPhone 6s/6s Plus以降のモデルで利用できるので、膨大な数のAR対応iPhoneがユーザーの手中に存在することになる。

 アプリの市場動向を調査する米センサータワー(SensorTower)のブログ(https://sensortower.com/blog/arkit-six-months)によると、この半年でARKitに対応したアプリは1300万ダウンロードを記録し、その半数近くがゲームカテゴリーであると公表している。ただ現実には、これよりもさらに多くのユーザーがARを体験している。というのは、この1300万件には、2017年12月にARKitに対応したポケモンGOは含まれおらず、その他にもAR体験をオマケ的に組み込んだアプリは含まれていないからだ。

 iPhoneはボリューム的に魅力のあるARプラットフォームであることは同意していただけるであろう。2018年3月末、そんなiPhoneのAR機能が大きな進化を遂げた。iOS 11.3でARKitが1.5にバージョンアップし、新たな機能が追加されたのだ。今回はARKitの新機能と、対応をいち早く表明したアプリを中心に、ARプラットフォームとしてのiPhoneの可能性について見ていこう。

ソニー・デジタルエンタテインメント・サービスが開発したARアプリ「Wonder Door」。いち早くARKit 1.5への対応を表明した
出所:ソニー・デジタルエンタテインメント・サービス
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ARKit 1.5の新機能

 ARKit 1.5の注目すべき新機能は、(1)垂直面の検出、(2)リアル世界の画像認識、(3)カメラ画質の向上──の3つだ。

(1)垂直面の検出
 ARKitにおける空間認識は、前バージョンでは水平面しか検出できなかったが、今回から壁などの垂直面のトラッキングも可能になった。これにより壁面に仮想オブジェクトを配置するアプリが作れる。例えば、iPhoneを壁面に向けると、画面に映し出された壁面にレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」が飾ってある、といったコンテンツを作成できる。

(2)リアル世界の画像認識
 標識、ポスター、イラストなどの現実世界の2D画像を認識し、それをトリガーとしてARコンテンツをユーザーの体験に盛り込めるようになった。端的にいうと「特定のマーカーにかざすことでイベントを発生させることができるARアプリ」を作ることができる。アップルのARKit解説には、「ARKit 1.5を活用し、アプリケーションでポスターに命を吹き込みましょう」とある。例えば、対応アプリを起動して街中のポスターにiPhoneをかざすと、ポスターに描かれたキャラクターが画面内で動き出すといった体験を提供できる。

(3)カメラ画質の向上
 従来のARアプリを通して見るリアル世界の映像が、ぼやけた感じで、荒れていると感じた人もいるだろう。それもそもはずで、iPhoneのカメラ性能に関係なく、ARKitを通した際の映像解像度は1280✕720ピクセルに固定されていた。リアルタイムでARの画像処理を行う場合、この程度の解像度が適切ということだったのだろう。また、空間認識に影響が出るという理由でオートフォーカスにも非対応だった。

 しかし、ARKit 1.5では解像度が向上しているという。アップルは「カメラビューを通じて映し出される現実世界は、解像度の向上やオートフォーカスへの対応によって、多くの状況でさらに鮮明なものになります」という言い方しかしていないので、正確な解像度は現時点ではわからないが、ARKit 1.5 対応のアプリが登場すれば向上の程度がわかるであろう。