日経アーキテクチュアの最新号に掲載した建築物をピックアップ。今号の1枚は、吉田誠さんが撮影した「秋田オーパ」です。「建築プロジェクトデータベース」(日経 xTECH有料会員サービス)では、雑誌の発行と連動して最新の建築情報を更新。概要データや写真・図面などを見ることができます。

JR秋田駅の駅前広場から見た南側全景。フッ素樹脂塗装したアルミ板でコの字に囲まれた内側に、高さ6層分のコンクリート打ち放しの耐震壁が立ち上がる。写真左側に見えるエレベーター部分は既存のままだ。1974年完成の建物を、耐震補強を含めて全館リニューアルし、2017年10月28日にオープンした(写真:吉田 誠)
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(日経アーキテクチュア5月10日号フォーカス建築から)

 運営者の撤退が危ぶまれた築40年超の大型ファッションビルを、耐震化とともに全面リニューアルした。耐震性能を高めるために吹き抜けを新設したり、巨大な耐震壁をシンボル化したりするなど、空間構成や意匠と一体化した耐震計画を練り、ファッションビルの価値を回復した。

 耐震化を含む全館改修を経て、2017年10月にファッションビル「秋田オーパ」がオープンした。JR秋田駅前に立つ建物は、鉄骨鉄筋コンクリート造の地下1階、地上8階建て。1974年に建てられた旧耐震基準の建物だった。完成以来、オーナーや運営会社は幾度か入れ替わったが、耐震補強は手付かずで、今回実施した。建物は、2009年から秋田市のすぐる不動産が所有し、イオングループのOPAが運営する。

 改修設計を手掛けたのは青木茂建築工房(東京都渋谷区)。既存不適格の古い建物を、現行基準に適合するように改修し、長く使えるように再生する「リファイニング建築」で多くの実績を持つ。青木茂代表は、「耐震補強は、意匠やプランと一体で考えることが重要だ」と強調する。

 その言葉を具体化した箇所が、随所に見られる。例えば、1~4階の吹き抜けだ。改修前にはなかった吹き抜けを、青木代表は改修設計の当初から提案した。「スラブを部分的に撤去すれば建物が軽くなり、耐震性の向上に貢献する。同時に、ファッションビルに大切な見通しの良さや開放感も与えられる」。今回、建物の軽量化を図るために、2~4階の一部のスラブのほか、外壁の建具や庇なども撤去している。

 正面外観には、高さが6層分あるコンクリートの耐震壁が現れている。耐震補強を意匠としても表現したものだ。通常は、柱・梁の内側に打つ耐震壁を、梁の外側に設けることで実現した。「高さ6層分の耐震壁は前例がないのではないか。この耐震壁は存在感のあるものにしようと考えた」。青木代表はそう口にする。

 耐震補強を含む全館リニューアルのきっかけは、13年に施行された改正耐震改修促進法だ。耐震診断の結果、既存建物の耐震指標Is値は、低層階の間口方向が最も低く、0.3程度だった。加えて、建物の構造は、大きく北側に偏心していたという。耐震補強では極力、偏心を解消するため、南側を中心に補強した。高さ6層分の耐震壁を的確な位置に設けるため、1階エントランスを1スパン隣に移している。