「マスティンバー・ウエーブが押し寄せている」。そう語るのは、木材を主要構造部に使用した高層ビル「ブロックコモンズ」(カナダ・バンクーバー)で、構造設計を担当したポール・ファスト氏(Fast+EPP社パートナー)だ。3月6日、日経 xTechのインタビューに答えた。マスティンバーとは、大型の木質材料のこと。カナダ西部から北米エリア全体に広がるマスティンバーのムーブメントや、現在挑戦している最新の木造技術などを語った。

3月上旬に来日したポール・ファスト氏。カナダ・バンクーバーに本社を置くFast+EPP社のパートナー。「ブロックコモンズ」では、主任エンジニアとして構造設計を担当した(撮影:菅原 由依子)
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――大型木造建築の盛り上がりを実感しているか?

 約20年前から木造建築に取り組み、最近ではカナダ西部から米国に向かって、「マスティンバー・ウエーブ(大型木質材の波)」が押し寄せているように感じている。1つは、政府が学校などの教育機関でどのように木材を使えるかというリサーチをしており、そうした木材活用の動きが公共施設から民間施設へと広がってきたことが大きい。

 もう1つがオフィス。IT企業のワーカーのなかには、ドライウオール(石こうボードなどを用いる乾式工法)の天井が続く従来型のオフィスだと大企業のようで息苦しいという意見がある。そこで新しいデザインを、より“ファンキー”に見せるため、木や鉄など様々な素材を使うことが増えてきた。そのほか、延べ面積数十万m2といった広大な商業ビルでも、木を使いたいと考えるデベロッパーが出てきている。

 現在、私たちFast+Epp社はカナダ・バンクーバーに本社を置いているが、あらゆるオーナーから、「商業ビルや集合住宅などを木造でつくれますか」という問い合わせが相次いでいる。やはり「ブロックコモンズ」のプロジェクトを異例のスピードで完成させたことが奏功したのだと思う。

 ブロックコモンズはバンクーバーに立つ学生寮で、18階建て。主要な構造部にマスティンバーを多用し、基礎や1階の柱、階段室などのコアは鉄筋コンクリート造とした混構造の高層ビルだ。58.5mの高さは、世界一の水準といえる。(2016年10月17日の記事で詳報

 このプロジェクトは計画段階から、エンジニアや建築設計者、政府、クライアントである大学、それらがいずれも高層木造ビルの建設に前向きだった。全てのメンバーがうまくそろったことで、急速に進められた。

 計画は2012年に始まり、翌年NRC(National Research Council)から資金提供を受けることが決定。15年1月に設計チームが決まり、10月に着工した。木材や外装パネルは、16年6月~9月の約9週間で施工した。

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