携帯電話大手が次の成長エンジンとして力を入れているデータの活用。スマートフォンによる位置情報と、スマートフォン決済による購買データの両方を取得できる携帯電話事業者は、マーケティングデータという観点で見ればベストなポジションにあるといえるが、一方でプライバシーへの配慮や「データの分断化」など様々な課題があるのも確かだ。

NTTドコモはデジタルマーケティングを次の成長エンジンに

 NTTドコモが2019年4月15日に新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表したのに続き、5月13日にはKDDIがauブランドの新料金プラン「新auピタットプラン」などを発表。行政の値下げ圧力を受ける形で、料金競争が加速しているようだ。

 その影響から、携帯電話事業者は今後の業績をいかに伸ばすか苦慮しているように見える。前回触れたソフトバンクのヤフー子会社化も、今後携帯電話事業の拡大が望めなくなったことを受けた取り組みといえるものだ。そうした中でも、料金競争の影響が最も懸念されているのが最大手のNTTドコモである。

 同社は今回の新料金プランで初めて、通信料金と端末代金を明確に分離する「分離プラン」を導入することから、来期以降業績に大きなマイナスの影響があるとしている。実際、同社が発表した2019年度(2020年度3月期)の業績予想を見ると、新料金プラン導入による顧客還元の影響が2000億円に達し、スマートライフ領域の伸びやコスト削減などを加味してもなお、営業収益が当期比2608億円減の4兆5800億円、営業利益が当期比1836億円減の8300億円と大幅な減収減益が見込まれている。

 それだけ大きなマイナスの影響に対して、「2019年度を利益の底にして早期に利益を回復させる」と2019年4月26日の決算説明会で代表取締役社長の吉澤和弘氏は話している。そのための取り組みとして吉澤氏が明らかにしたのが、デジタルマーケティングの推進である。NTTドコモが持つ「dポイント」などの会員基盤を用いてマーケティングオートメーションを整備し、パートナー企業のソリューションを活用することで、その顧客となる会員とのリレーションを強化するのだという。

NTTドコモは既存事業による大きな顧客基盤と、そこからもたらされるデータを活用したデジタルマーケティングを次の成長エンジンと位置付けている。写真は2019年4月26日のNTTドコモ決算説明会より(筆者撮影)
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 マーケティングオートメーションとは、デジタルを活用することで顧客満足度を高め、顧客と長期的な関係を作り上げることで売り上げを拡大するというサイクルを自動化する仕組みのこと。NTTドコモは、dポイントやスマートフォン決済の「d払い」による決済データ、そして「モバイル空間統計」に代表されるスマートフォン利用者の位置に関するデータをパートナー企業と活用することで、より効率的なマーケティングを展開していくものと見られる。

 そのことを象徴している事例が、2019年1月16日にNTTドコモと電通による、デジタル屋外広告を手掛ける「ライフボード」という会社の設立である。ライフボードでは、モバイル空間統計などのデータを活用し、時間や場所に応じた広告の視聴数を推計することにより、特定のターゲットに訴求できる屋外広告を提供するなどの取り組みを進めるとしている。

NTTドコモは電通とデジタル屋外広告を手掛ける「ライフボード」を設立。NTTドコモが持つ「モバイル空間統計」を屋外広告の視聴数計測や配信などに活用するという。写真は2019年1月16日のNTTドコモ・電通説明会より(筆者撮影)
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ヤフー子会社化で一気通貫のデータを得るソフトバンク

 NTTドコモがデジタルマーケティングに成長の活路を見いだすに至ったのには、1つに携帯電話事業で大きな顧客基盤を持ち、その位置情報を取得・活用できる立場にあること。そしてもう1つ、最近ではdポイントやd払いなどによって、購買情報も取得できる立場となったことが挙げられる。

 インターネット上の顧客動向を追跡する方法はいくつか存在するが、顧客が実際にどこの店舗に向かい、どのような商品を購入したかといったデータは、多くの企業にとって容易に取得できるものではない。特に広告やマーケティングなどを手掛ける事業者にとって、位置や購買などのデータは、広告などの施策が実際の購買につながっているか、顧客の行動を追跡・把握する上で非常に重要なものとなる。そこでNTTドコモは自社の有利な立場を生かしたデータ活用に次の成長を求めたといえそうだ。