確実なニーズはあるが価格競争の懸念も

 それだけに、わざわざ専用のデバイスを購入しなくても、「Google翻訳」などスマートフォンの翻訳アプリを使えば済むのではないかと考える人もいるだろう。だが言語によって翻訳精度の高いエンジンは異なってくるし、それぞれの国にベストな翻訳アプリをそろえ、使い分けるというのは多くの人にとって面倒なものだ。

 また筆者の経験からいうと、実際に海外で外国人を前にしてスマートフォンの翻訳アプリを使おうとした場合、アプリを立ち上げて実際に翻訳するまで意外と時間や手間がかかってしまい、焦ってしまうことが多かった。それだけに、翻訳に特化しすぐ使えることを重視した自動翻訳機は、万人に必要というわけではないものの確実なニーズがあると感じる。

 ただ一方で、スマートフォンの技術をベースとしているため参入障壁は比較的低く、既存のクラウド翻訳エンジンを使うことが多いため差異化要素も多くないとみられる。それゆえ参入事業者が増えるとともに激しい価格競争に陥る懸念も否定できず、いかに市場を拡大できるかが今後の自動翻訳機事業を左右するとも言える。

 そうした意味で期待できそうなのが学習用途である。実は翻訳目的ではなく、語学学習を目的として自動翻訳機を購入する人も意外と多く存在するという。例えばPOCKETALK Wは、翻訳履歴をWebブラウザーで後から確認できる機能を提供するなど、学習用途を意識した機能強化が図られている。

 そしてもう1つはデバイスの幅の広がりであろう。特に手堅い法人向けのニーズを満たすうえでは、携帯型デバイスだけでなく、より大型のデバイスや据え置き型デバイスなど、新たな形態のデバイスが市場拡大につながると考えられる。実際TAKUMI JAPANはそうしたニーズを見据え、ホテルなどでの利用を想定したタブレット型の「KAZUNA eTalk5 Biz」を開発中だとしている。今後そうした動きがより広まると期待したい。

TAKUMI JAPANは法人向けのニーズに応えるため、据え置き型の「KAZUNA eTalk5 Biz」を開発していることを明らかにしている。写真は2019年1月17日のTAKUMI JAPAN新製品発表会より(筆者撮影)
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佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。