しかも中国ではそれら2つのサービスが広く普及したあまり、釣り銭が十分に用意されていない店舗も見られるなど、現金での決済対応力が弱まってきていると感じる。もともとクレジットカードの利用が難しい国だけに、QRコード決済の普及によって短期滞在の外国人は決済しづらくなってしまっているわけだ。

中国では多くの店舗で、Alipay(支付宝)やWeChat Pay(微信支付)による決済が普及したことから現金での決済対応が弱まりつつあり、それらサービスの利用が難しい短期滞在の外国人には不便な状況となりつつある(筆者撮影)
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 そうした状況があるにもかかわらず、QRコード決済に力を入れる多くの事業者は、AlipayやWeChat Payと連携してのインバウンド対応には力を入れるものの、アウトバウンドに関して動きを見せない。例えば2018年11月27日に実施された「LINE Financial Conference」で、LINE社はWeChatを提供する中国の騰訊控股(テンセント)と提携し、LINE Payの加盟店でWeChat Payが利用できるよう連携を図ることを明らかにした。だがLINE Payの中国におけるWeChat Pay加盟店での利用に関して、LINE Pay社の取締役COOである長福久弘氏は「LINEを中国で提供していないので使えない」と回答するにとどまっている。

 日本の企業が他国、特に中国で何らかの決済サービスを提供するには非常に多くのハードルがあり、実現が難しいのは確かである。だが消費者の不便を解消するためのキャッシュレス化が、国をまたいだ途端に不便さを生み出すという現状が、好ましい状況とは言えない。日本政府観光局(JNTO)が公開する「各国・地域別 日本人訪問者数[日本から各国・地域への到着者数](2013年〜2017年)」によると、2016年時点で中国に訪問した日本人は258万7440人と、米国に次ぐ人数に達している。今後何らかの形でQRコード決済のアウトバウンド対応が進むことを期待したい。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。