動画の多様化とAIで世代間の問題を解消

 TikTokのユーザー層は10代、20代が圧倒的多数を占めている。過去の傾向から見ても、そうしたサービスの多くはより上の年齢層のユーザーを獲得しにくく、利用者数が頭打ちになりやすい。その壁を突破しなければ今後の成長は考えにくいだけに、TikTokがどのようにして上の世代のユーザーを獲得するのか、気になるところだ。

 井藤氏は「どこの国でも(TikTokに)最初に飛びつくのは10代、20代だ。それは楽しむのにスマートフォンのリテラシーが必要だから」として、スマートフォンの利用に積極的な若い世代からサービスが広がるのは自然なことだと説明する。続けて、先行してサービスを提供しているTikTokの中国版「抖音(ドウイン、Douyin)」では、若い世代からシニアまで、幅広い世代が動画を投稿しているとも話している。

中国でTikTokは「抖音(ドウイン、Douyin)」という名称で提供されており、若い世代だけでなく幅広い層に利用されているという。画像は抖音のWebサイト
(出所:バイトダンス)
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 抖音で30代、40代などが撮影・投稿する動画は、若い世代に多い自分撮りやダンスなどではなく、風景や料理、家族などが中心になるという。井藤氏は「日本でも30%のユーザーが26歳以上」と話す。加えて、グルメや観光、ファッションなど動画の種類に広がりが出てきていることや、ジオタグにより動画を情報として活用してもらう機能も備えていることから、日本でも今後利用者層が若い世代以外にも広がってくるものと捉えているようだ。

 だが一方で、現在TikTokで多数を占めている若い世代は、より上の世代との交流を好まない傾向にある、このため、30、40代以上の親世代がTikTokを利用することに拒否反応を示す可能性も高い。この点について井藤氏は、バイトダンスが強みを持つAI技術が解決策になると話している。

 TikTokはAIの活用によって、ユーザーの好みに応じた動画が現れる仕組みに力を入れている。それに加え、興味のない動画が再生された場合、ボタンを押すことで次から同じ動画が出てこない仕組みも備えている。そのため10代のアカウントでは10代が好む動画、50代のアカウントには50代が好む動画が現れるようになり、世代や嗜好が異なる動画がマッチングしにくくなっているのだという。

当面はマネタイズよりもユーザー獲得

 もう1つ、若い世代に人気のサービスで大きな課題となるのは、若い世代は可処分所得が低いためにマネタイズが難しい点だ。だが井藤氏は「(マネタイズは)あまり考えていない。(バイトダンスからも)まだ言われていない」と話しており、日本においては当面、マネタイズよりもユーザー獲得を重視していく考えのようだ。

 井藤氏の一連の回答からは、バイトダンスがTikTokを若い世代向けのサービスとしてではなく、YouTubeのように幅広い層に利用されるサービスとして普及させる狙いを見て取ることができる。

 一般ユーザーの投稿やライブ配信を主体とした動画サービスは国内外の様々な企業が提供し、活況を呈している。だがいずれのサービスも若い世代向けというポジションから脱却できず、YouTubeのライバルとなる存在が登場するには至っていないというのも実情だ。

 しかしながら、TikTokは世代間ギャップの問題をAIによるリコメンド技術で解消し、さらに中国で幅広い層に利用される実績を持つことから、YouTubeのポジションに近づける可能性が出てきたと言える。TikTokの顧客属性がYouTubeに近づき、可処分所得が高い30代、40代以上の顧客を獲得できれば、広告を中心としてマネタイズ手段を大きく広げられるメリットが生まれてくるだろう。

 若い世代の盛り上がりを継続しながら、いかに上の世代を獲得してバランスの良い成長を遂げ、確固たる足場を作ることができるか。急成長したTikTokにとって、2019年は正念場となりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。