LINE上でLINK Pointを展開しない理由

 ユーザー視点からすると、確かにサービスの貢献度合いに応じて報酬がもらえる仕組みは魅力的である。だが既にLINEという大きいプラットフォームが存在するにもかかわらず、それとは別のプラットフォームを用意し、LINEとは異なる形でサービスを提供する理由を見出しにくいのが正直なところである。

 また国内に関して言うならば、1つの会社がLINK PointとLINEポイントいう2つの異なるポイントプログラムを提供すること自体、意義を見出しにくく、仕組みが複雑に見えてしまうのも事実だ。なぜLINE社は、LINE Token Economy構想をLINEとは異なるサービスとして展開しようとしているのだろうか。

 この点について出澤氏は、「我々がやりたいのは、新しいプラットフォームを作ろうということ。LINE Token Economyが大きなプラットフォームになるポテンシャルを秘めているので投資をしている」と話す。Clovaなどと同様に、LINEとの連携は図っていくものの、あくまで従来とは異なる新しいプラットフォームを作り出したいというのが、LINE社の狙いのようだ。

 その背景にあるのは、海外でのサービス拡大ではないかと筆者は見る。LINEは台湾やタイ、インドネシアなどでも活用されているものの、日本以外では伸び悩み傾向にあり、海外での事業拡大に向けては先が見えない状態が続いている。

 それだけにこの構想には、従来のLINEとは異なる新しい軸のプラットフォームを提供することで、LINEの普及度合いに縛られることなくユーザーを獲得できる環境を作り、再び海外事業を拡大していきたい狙いがあるといえそうだ。実際出澤氏は、「LINKはLINEがなくても使える。海外のサービスにLINE Token Economyに参加してもらえれば、海外展開も進められる」と話しており、あえてLINEと距離を置くことが、海外ではメリットになると考えている様子がうかがえる。

LINE社 代表取締役社長CEOの出澤剛氏。LINEとLINE Token Economyを別の形に提供する理由の1つに、LINEに縛られないことで海外でのサービスを拡大しやすくなることを挙げている。写真は2018年9月27日のLINE社記者説明会より(筆者撮影)
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 ただいずれにせよ、LINE Token Economyが成功を収めるには、やはりサービスの充実が欠かせない。既に一部のdAppは試験的に提供を開始しているとのことだが、消費者がdApp、そしてLINKやLINK Pointに明確な価値を見出せなければ、利用は広まらないだろう。いかに早い段階で魅力的なサービスを増やし、ユーザーの支持を集めることができるかが、勝負所になりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。