低価格で同等機能を持つタブレットなどと差異化できるか

 ただ一方で、ディスプレーが搭載されたことで新たに浮上してきた問題もある。音声操作が可能で、なおかつディスプレーを備えたデバイスは、既にスマートフォンやタブレットといった形で存在していることだ。

 特にタブレットは元々自宅内で利用することが多いのに加え、低価格化が進み、Amazon Echo spotの販売価格(1万4980円)と同じ程度、あるいはそれより安い価格で購入できるものもいくつか存在する。実際、同じアマゾン・ドット・コムの「Fire 7」は5980円、「Fire HD 8」は8980円、最もディスプレーサイズが大きい「Fire HD 10」でさえ、1万5980円で販売されている。

 これらは日本においては、Amazon Echo spotなどに搭載されているAlexaの利用に対応していないものの、米国などでは既に対応済みだ。音声操作を主体に据え、専用のデバイスということもありスマートディスプレーのほうが手軽に操作できるメリットはあるものの、既に多くの人がスマートフォンやタブレットの操作になじんでいる現状、その優位性がどこまであるかという点には疑問がある。

 そうしたスマートフォンやタブレットの優位性を強く意識しているのがNTTドコモだ。同社は自社のAIエージェントサービス「My daiz」を、基本的にスマートフォンやタブレットのみに提供する方針を示しており、スマートディスプレーなどのデバイスを自社開発する考えはないとしている。

 My daizは利用者の日常行動から必要な情報を先読みして提供することに力を入れるなど、携帯電話会社が開発しているだけに従来の音声アシスタントとコンセプトがやや異なる部分がある。とはいえ、音声アシスタントを提供する側がスマートスピーカーやスマートディスプレーにこだわらない方針を打ち出すというのは、興味深い動きでもある。

NTTドコモが2018年5月16日に発表した「My daiz」は、音声操作を活用したAIエージェントサービスだが、あくまでスマートフォンやタブレットに向けたサービスと位置付けている。写真は同日に実施されたNTTドコモの2018夏 新サービス・新商品発表会より(筆者撮影)
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 ディスプレーの搭載によって、スマートスピーカーの進化の方向が大きく変化する可能性は出てきた。だがそれがスマートフォンやタブレットへの先祖返りとなってしまっては意味がない。スマートディスプレーならではの明確なメリットが打ち出せるかどうかが、普及に大きく影響してくると言えそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。