ゲームの先を見据えるハンケ氏

 ナイアンティックは技術やコンテンツの範囲を徐々に広げているが、AR技術を活用して人々を外に連れ出しコミュニケーションを活性化していくという方針に変わりはないようだ。それは2018年2月に、ARのプラットフォームを提供するベンチャー企業である米エッシャーリアリティ(Escher Reality)を買収したことからも見えてくる。

 ハンケ氏は同社の買収に関して、「彼らの技術を活用してARのゲームプラットフォームを強化していく。目指すのはたくさんのプレーヤーが一緒にARを見て楽しむ体験を作ることだ」と話している。多くの人が集まって楽しむという体験自体は既にIngressやポケモンGOで実現しているが、ハンケ氏はその先、つまり眼鏡型デバイスの普及を見越し、視覚的なAR表現をさらに強化することを目指しているようだ。

 またハンケ氏は同社の買収によって、クラウドによりプラットフォームを問わずARマッピングを利用できるデータプラットフォーム「クロスプラットフォームARマッピングクラウド」の開発を目指しているとも答えている。ハンケ氏はそのデータを用い、ゲーム以外の分野におけるARの活用も推し進めていきたい考えのようだ。

 とはいえ、当面同社にとって重要なのはゲーム事業での実績を積み上げていくことだろう。直近では、Ingressの新しいバージョン「Ingress Prime」の提供開始だ。ハンケ氏はIngress Primeに関して、提供時期などについての明言は避けたものの、ポケモンGOから得たノウハウを生かし、数分間のチュートリアルを導入するなど、より間口を広げたものにするとの考えを示している。さらに同社は「ハリー・ポッター」を題材にしたゲームアプリ「Harry Potter:Wizards Unite」の開発を発表している。

Ingressの新バージョン「Ingress Prime」。Ingressの世界観はそのままに、新しいプレーヤーが入り込みやすい仕組みを取り入れ、演出・表現などが大きく変わるという。写真は4月7日の「Mission Day Fukuoka」「XM Festival Fukuoka」アフターパーティーより(筆者撮影)
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 ナイアンティックがARを主導する企業の1つとなったのも、同氏のAR技術に対する考え方がゲームに反映され、それが支持を集めたが故である。Ingress Primeをはじめ、今後同社が提供する新たなゲームなどにもそうした考え方が盛り込まれていくことは間違いない。ナイアンティックやハンケ氏が、ARの世界にどのような新風を吹き込んでくれるのか、今後も注目を浴びることになりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。