個人向けのVRは盛り上がりに欠けるのに、アミューズメント施設向けのVRが盛り上がっているのはなぜかだろうか。その理由はやはり手軽に体験できることに尽きるだろう。自らVRデバイスを購入してまでVRコンテンツを体験したいと考えていない人であっても、アミューズメント施設であれば、数百円から数千円程度の出費で気軽に非日常的なVRを体験できる。

 しかもこうした施設は、渋谷や新宿などの都心部、あるいはショッピングモールなど、比較的若い世代が集まる場所に設置されているのも大きなポイントだと筆者は見る。テクノロジー面でVRに関心を持つ人だけでなく、目新しいVRコンテンツをライトに楽しみたい若い世代からの人気を獲得することは、VRの普及に大きな道筋を作ると考えられるからだ。

韓国サムスン電子が平昌五輪の会場に展開していた「Galaxy Olympic Showcase」でも、VRを活用して冬季五輪の種目が体験できるコーナーが人気となるなど、VRに詳しくない一般層がVRを積極的に楽しむ様子が見られた。写真は2月11日の同パビリオンより(筆者撮影)
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子供のVR利用にめど、ファミリー層も開拓へ

 だがこれまで、アミューズメント施設でVRコンテンツの利用を広めるうえで、1つ大きな課題があった。それは子供がVRコンテンツを楽しめないことだ。

 HMDを用いたVRの利用は、子供の立体視の発達に影響を及ぼすとされているため、制限を設ける場合が多い。例えば、施設型のVRを提供する企業らが設立した業界団体のロケーションベースVR協会は、これまで13歳未満のVRコンテンツ利用は認めていなかった。だが子供がVRを楽しめなければ、その親がVRを提供するアミューズメント施設に訪れる機会はなく、ファミリー層を獲得できないことが大きな弱みとなっていた。

 そうしたことから子供が楽しめるVRの研究開発や議論なども積極的に進められている。ロケーションベースVR協会は2018年1月5日に、両眼立体視機器を使用した施設型VRコンテンツの利用年齢に関するガイドラインを施行。一定の条件の下、7歳以上13歳未満でもVRを利用できるようにするための指針を示した。

 さらに独自の技術によって、子供でも安心して利用できるVRを実現する動きも出てきている。日本と中国で展開しているアミューズメント施設「モーリーファンタジー」において、イオンファンタジーとグリーは共同開発した2種類のVRゲームを2018年3月20日に公開した。これらは共に複眼ではなく単眼、要するに両目で1つのモニターを見るタイプのHMDを採用。さらにミラーを活用してモニターと目の間に一定の距離を設けることで、VRならではの没入感を作り出しながらも、目の発達に影響を与えないHMDを実現したという。

イオンファンタジーとグリーが共同開発した子供向けVRゲーム「VRぶっとびバズーカ」。HMDに単眼のモニターを採用し、目とモニターの間を離すなどして、子供が安全に楽しめるVR環境を実現している。写真は3月20日のイオンファンタジー×グリー 記者体験会より(筆者撮影)
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 こうした環境の整備によってアミューズメント施設でVRを楽しむ人達が増えれば、VRに関心を持つ人が増え、家庭でのVR利用の拡大にもつながるだろう。アミューズメント施設向けVRの動向は、今後VR全体の動向を知るうえで大きな意味を持ってくるかもしれない。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。