Q.先日あるIT資格を取得するために、数十万円する研修を受講しました。費用は全て会社負担です。ところが転職することが決まって会社に報告すると「転職するなら費用を全額返還するように」と迫られました。社内規程にはそんなことは書かれていません。私は研修費用を返さなければならないのでしょうか。

 この種の相談は昔ほど多くはありませんが、まだまだあるようです。資格を重視しすぎた会社によくあるトラブルで、費用の返還を求めるぐらいなら、会社はそんな制度をやめたほうがよいと思います。また、資格と給与の連動は仕事ができない「資格マニア」の増殖を招きます。仕事をしないのに給与が高い人が増えて職場の不満が広がりかねません。

 では、研修費用を返還する必要はあるのでしょうか。答えはNOです。確かに資格を取得するために会社が研修費用を負担するケースはよくあります。中には試験と研修がセットになっていて会社が高額な費用を負担する例もあります。海外留学や社会人大学院、専門学校など数百万円もの通学費用を負担する会社もあるかもしれません。素晴らしい会社だと思う半面、質問のケースのようなトラブルが発生しがちです。会社から見れば「高い費用を負担したにもかかわらず、会社の業務に何ら貢献していない」と腹がたつのも理解できます。

 しかし社員が退職すると言い出しでも「費用を返還せよ」という言い分は現実的に通用しません。もし研修費用を返してほしいなら、初めから研修費用については「受講後〇年間は立替金扱いとする」と明確にしておかなければなりません。

 いずれにせよ、後から返還せよというような制度なら、初めからやめておくべきです。そうしないと必ずトラブルの原因になる制度です。質問者も上記のことを踏まえて、会社側とよく話し合ってください。

 一方、会社側の取るべき行動についても触れておきます。まず費用を負担する会社で重要なのは、受講者の人選です。社外研修や海外視察研修も含めて、費用負担する限りは会社の役に立ってもらわなくてはなりません。会社側の管理職が人選し、研修を受けてもらうのです。人選を慎重に行うことが重要であり、退職者が出ても「見る目がなかった」と納得できるでしょう。

 また、会社を辞める・辞めないは社員の自由です。会社を辞めることを理由に費用返還を要求するような行為は、退職の自由を奪う行為だと受け止められかねません。この会社にいたい、この資格を活用して上位のポジションにつきたい、と思うような制度を作ることに注力すべきです。

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